7月24日に公開された『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の興行収入が100億円を突破した。2020年にX(旧Twitter)で始まった漫画は、約6年で100億円映画を生み出す巨大IPへと成長した。
映画は公開初週の3日間で観客動員150万人、興行収入22.4億円を記録。8月16日までの公開24日間では観客動員645万人、興行収入92.8億円に達していた。さらに8月8日に第2弾入場者特典「ボンボンドロップシール」の配布が始まると、8月7~9日の3日間で動員114万7000人、興収16億9900万円を記録し、週末動員ランキング1位に返り咲いた。
なぜ「ちいかわ」は、ここまで巨大なIPへ成長したのか。その強さは、単に「キャラクターがかわいい」だけでは説明できない。
6月17日実施の「日本キャラクター大賞2026」の授賞式で展示された「ちいかわ」グッズ
「ポケモン」「ONE PIECE」も未達、史上初の3連覇
映画の興行成績と並んで象徴的なのが、キャラクター・ライセンス業界からの評価だ。
6月17日に発表された「日本キャラクター大賞2026」では、「ちいかわ」がグランプリを獲得した。2024年から3年連続の受賞で、同賞では史上初。審査会では「殿堂入り」も決まった。
同賞では過去に「ポケットモンスター」「ONE PIECE」「くまモン」「妖怪ウォッチ」「鬼滅の刃」などがグランプリを受賞しているが、3年連続は「ちいかわ」が初めて。「ちいかわ」は2022年にもグランプリを獲得しており、これで計4回の受賞となった。
評価理由として挙げられたのが、「高い認知と安定した商品展開」と「幅広い層への浸透」だった。
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「キャラがかわいい」だけではない物語性
では、その「安定した商品展開」を可能にしているものは何なのか。そのヒントを示しているのが、全国で「ちいかわらんど」を運営するキデイランドだ。
キデイランド取締役/ちいかわらんど事業部 部長の岸本天氏は、ちいかわというIPの特徴として、原作漫画のストーリーや場面そのものが強く支持されていることを挙げている。
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実際、映画公開後のXでも、物語の奥深さに言及する反応が目立つ。「可愛いだけじゃなく奥が深い」「闇深いストーリーに胸を打たれた」といった声のほか、かわいらしい世界の中で「命や罪」が問われていると受け止める人もいる。
「ちいかわ」の世界では、登場人物たちが草むしりや討伐といった仕事で報酬を得たり、資格取得のために勉強したりする姿が描かれる。一方で、危険な討伐や理不尽な出来事にも直面する。かわいらしいキャラクターとは対照的に、生活や労働、努力、運不運といった現実にも通じる要素が、時に不穏でシビアな物語として織り込まれている。
そのため、ファンが反応するのはキャラクター単体のかわいらしさだけではない。漫画で見せた「あの表情」「あのシーン」、さらにはそこに至るまでの物語の文脈も含めて愛されているという。作者のナガノ氏が漫画を更新するたびに新たな出来事や場面が生まれ、それが商品や店舗装飾にも反映されていく。
この特徴は、グッズ展開にも生きている。単に同じキャラクターの衣装やポーズを変えるだけでなく、新しい漫画が公開されるたびに、そこで生まれた「出来事」や「文脈」そのものが、新たな商品や体験の種になるためだ。
