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インタラクティブならではの映像話法(前編)

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テレビにはテレビの、WebにはWebの強みがある。互いに長所を洗練させることこそ、強いコミュニケーションを生むきっかけになるはずだ。デジタルならではの映像表現を追求するインタラクティブエージェンシーunit9の仕事を紹介する。

例えばアメリカの広告主の課題を、スイスのディレクターやロンドンのデザイナー、パリのキャラクターデザイナーがチームを組んで解決にあたる。撮影はロスで、開発チームはイタリアやブラジル…これがunit9の平均的なプロジェクトのあり方。世界中にちらばるおよそ70人の「unit9’ners」の中から、4人のディレクターにそれぞれの仕事について尋ねた(本記事は、月刊『ブレーン』2012年3月号に掲載した記事に加筆したものです)。

実写とCGのバランスが鍵

一つめはメルセデス・ベンツの「Escape The Map」。インタラクティブディレクターを務めたのはロブ・コラディさんだ。メルセデスが2011年11月11日~12月11日までの約1カ月間実施した、インタラクティブ・コンテンツ形式のコンテスト。英国在住の21歳以上を対象に、クリアした人の中から抽選でCクラス350ブルーエフィシエンシー・クーペを贈る企画。テレビCMなどと連動して展開した。

アクセスすると、Googleマップの「ストリート・ビュー」のような光景が現れる。辺りを見回していると、顔がぼやけた女性が登場。彼女に促されるままCクラスAMGクーペに乗り込むと、「デジタル世界に囚われた自分を助けてほしい」と助けを求められる。マリアと名乗る彼女と共に、簡単なパズルなどをこなしてゴールを目指していく。

途中、ビルの壁面が波打って、世界が崩壊しはじめたり、地図上のスポットを示す「ピン」が上空から降ってきたり。「インタラクティブ・フィルムは「実写映像とCGIによる表現のバランスが鍵」と話すコラディさん。どの場面にインタラクティブ性を持たせるか、AMV BBDOやRSA、Digital Domainといったパートナーと共に、画コンテやアニマティックス(ビデオコンテ)で慎重に検討を重ねたという。

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デジタル合成に断固反対

アイリッシュ・ウィスキーの老舗ジェイムソンのキャンペーンサイト。米サンフランシスコの広告会社Evolution Bureauが「サイト訪問者に(創業年である)1780年のダブリンを探検してもらおう」とのアイデアを発案したのが制作のきっかけ。ディレクターを務めたマーティン・パーシーさんは「素敵なアイデアだけれど、どう実現するかが課題だった」と振り返る。手段の一つとして、グリーンバックで俳優らに演技してもらい、1780年代のダブリンの様子をデジタルで再現して合成すること。しかしパーシーさんはその手法には断固反対した。

「僕らが必要とした感情的なつながりを築くためには、実写で撮影すべきだと強く訴えた。18世紀調のロケーションを探して、照明もできる限りロウソクを用いるべきだと」(パーシーさん)

制作は実際、そのとおりに行われた。撮影はイギリスやダブリンの街中に18世紀から残る建物でのみを用いて実施。衣装も美術も時代考証に沿ったものを採用。照明の80%は、パーシーさんの言葉通りロウソクや、ほかには暖炉を活用した。ただし、ちらつきを再現するために電気照明を生かしている。

ストーリーは、「蒸溜所から盗まれた樽を探してほしい」と創業者ジョン・ジェイムソンから依頼を受けるシーンから始まる。どうやら犯人は、アクセスしたユーザーのFacebook上の友人の誰からしい…とのこと。1780年のダブリンを描いたマップ上の建物をクリックすると、実写映像が展開。街の住人が話しかけてくる。彼らとコミュニケーションを取りながら6つの手がかりを集め、樽の行方を明らかにしていく。

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