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コラム

片岡英彦のMPR(Marketing PR)な人々

「日テレを退社する方法」

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こんにちは。片岡英彦です。全12回連載予定のこのコラムも残り2回となりました。第11回目は「あなたの広報活動はなぜ失敗するのか?」という「失敗」の「型」について考えたいと思います(B to CのマーケティングPRの視点です)。

戦略広報で失敗するパターンは大きく3つのパターンがあると思います。

「戦略広報」が失敗する3つのパターン

  • 切り口(テーマ)が浅い
  • 露出不足
  • 「ターゲット」への固執

切り口(テーマ)が浅い

私が日本テレビに在職中にある人気番組のプロデューサーからこんな話を聞きました。「徳利の中の熱燗がいつまでも冷めない」アイデアがあったとします。そのまま番組で紹介するのではなく、まずこのアイデアを日本酒でなく「コーヒー」でも応用できないか試してみます。試した結果、コーヒーでも冷めなかったとします。次に「鍋」でも試してみます。日本酒やコーヒー程でなくても、「鍋」でもある程度の効果があったとします。夜7時台の全国ネットの番組では、(あくまでウソのない範囲で)「鍋がいつまでも冷めない方法」として紹介します。試行錯誤したスタッフの苦労は、もちろん一切放送されません。この話を聞いて以来、戦略広報上においても切り口(テーマ)を間違えるとは、一言でいうと「試行錯誤」が浅かったのだと自分自信を戒めています。もちろん広報活動においては「実験」はできません。試行錯誤というより“思考錯誤”となります。別の「切り口」の方がうまくいくのではないかと、いくつかの引き出しを常に用意しておくというのは失敗しないための重要なポイントです。

露出不足

かつて番宣担当をしていた頃、あまり有名でない媒体からの取材を断ろうとしたことがあります。一言でいうと「面倒くさかった」のです。多くの有名タレントが出演するドラマで多くの取材予定が詰まっていました。タレントの「特写」の必要な依頼でしたので、電話でお断りしようとしたところ、近くの席ににいた年上の女性の先輩から烈火のごとく怒られました。「自分の判断で取材依頼を断るな」ということでした。

もちろん、どうしてもスケジュール的にムリがある場合や、自分以外の誰か(例えば現場のディレクターやタレントのマネージャー)が断るなら別ですが、それでもギリギリまで取材を断らないように努力するべきだと言うのです。納得がいくまでには時間がかかりました。今でも「何でもかんでも取材を入れればいいわけではない」と多くの経営者や広報職の方が思っていることと思います。ですがその後、ずいぶんと色々な経験をした結果、やはり私はこの先輩の考えは正しかったと思っています。きつい言い方ですが、広報担当者の中には取材を断ることが仕事のようになっている方がまれにいます。取材のお願いのために「外回り」をするより、社内で取材依頼を待ち、相手を「セレクト」する立場に身を置けば、そこに「プチ権力」が生まれます。こうした方々は、みなさん決まったフレーズを使います。「希望通りでないメディア露出をされるくらいならば露出しない方がよい」と。もちろん間違ってはいないのですが経験的に、このフレーズをよく使う企業の商品やサービスは、あまり売れていないことが多い気がします。言葉を言い換えますと「希望通りの露出をするために、何をしていますか?」という投げかけでもあります。また、現に売れている商品やサービスは、良くも悪くも色々メディアに多く露出しています。広報活動の成果において「露出量」は1つの重要な指標だと思います。

「ターゲット」への固執

#11 キャプション別記

「一万回も失敗したそうですね」と記者に言われたエジソンは「うまくいかない方法を一万通り発見した」と。

宣伝や広報を学び始めの方は「ターゲット」という言葉が好きです。しかし、よくお話を聞いていると「年齢層」「首都圏 or 地方」などの「地理的要素」や「デモグラフィック」(人口統計)などの「セグメント」のことを中心にお話されていたりします。その「ターゲット」をどんどん絞っていくうちに、本来は存在するかもしれない「ニーズ」が存在する可能性をどんどん切り捨ててしまっていることがあります。

「そんなにターゲットを絞り込んだら、全員買っても儲からないよ・・・」と笑い話になることもあります。かつて無名のお笑い芸人を裸体で和室に「軟禁」して懸賞に応募させ続けるというバラエティー番組の人気コーナーがありました。恐らくどんなに綿密なリサーチや旧来のセグメンテーションの思考でターゲットを絞っても、ああいう「正解」(ニーズ)は掘り出せなかったでしょう。ターゲットを深く分析していくことは重要ですが、これまでににない広報手法という発想で、日頃から市場にアンテナを張り、ざっくりとターゲットに「アタリ」をつけ、既存の広報活動では拾えなかった新しいターゲットを発掘していく姿勢も大切です。

「エジソンは失敗を楽しんでいたんとちゃいますか」 ジミー大西(画家)

私が日本テレビを退社したのが2001年の9.11直後でした。かれこれ10年以上前の話になります。広報・宣伝に関するあらゆる知識や経験の基本は、すでに日テレ時代の成功や失敗(主に失敗から)から学んだものが多いです。最近でこそ若い社員の方が一流企業を退社し転職することも当たり前の時代になりましたが、私は下記の3つのことを退社後も大切にしています。

日テレを退社する3つの方法

  • 自分の「故郷」である日テレに常に敬意を払う(時にガチンコの交渉はしますが)。
  • 自分の「故郷」の人たちをいつまでも大切にする(時に飲んだ勢いで諸先輩方に失礼なことも言いますが)。
  • 用がなくてもたまには顔を出す。(ついでにうっかり「営業」することもありますが)。

それではみなさま。また来週。

片岡英彦「片岡英彦のMPR(Marketing PR)な人々」バックナンバー

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