ジャニーズ事務所と吉本興業の「二次使用」について戦略広報の視点で考える

こんにちは。片岡英彦です。第9回目はコンテンツの「二次使用」について戦略広報上の問題点を考えてみたいと思います。

戦略広報上、コンテンツの「二次使用」が重要な理由は3つあります。

「二次使用」が重要な3つの理由

  • 「同じコンテンツ」を「繰り返し」、「他の媒体」でも扱える
  • 「制作費」があまりかからない
  • 消費者による「二次創作」を期待できる
二次使用コラージュ

私は現在、「広報」や「広告」の活動の「発注する側」「受注する側」双方の立場としてお仕事させて頂くことがあります。また「メディア側」の一員としてクライアントや代理店に接することもあります。「広告」と「広報」との境界線がすでになくなりつつあることをリアルに実感しています。もちろん「広告」には「広報」の良い部分を取り入れ、「広報」には「広告」の良い部分を取り入れようと努力しています。広告の弱点は消費者目線では「信頼性」、クライアント目線では「高コスト」などです。広報の弱点は「不確実性」「再現性」などです。両者の弱点を補完したいと考えています。簡単に言うと「低コスト」で「信頼性」ある情報を「繰り返し」掲載(告知)できないものかと考えます。

コンテンツの「二次使用」とはこの目的のために有効な手段の1つだと思います。

コンテンツの「二次使用」の目的

  • メディアで「広告」または「記事」として掲載されたコンテンツを、自社Webなどで、二次使用、または事前告知することは、比較的「安価」に交渉ができます。
  • 信頼性のある「メディア」が掲載した情報は「広告」「記事」に関わらず、再利用(再掲載)した際にも、一定の「信頼性」(信憑性)が得られます。
  • 二次使用したコンテンツが消費者間で話題(クチコミ)となり、三次利用、四次利用へとさらに広がる可能性があります。(時に、シミュラークルとして。)

最もこの「二次使用」については著作権側(コンテンツホルダー側)の立場により大きく考え方が異なる場合があります。ここでは日本の大手芸能プロダクションであるジャニーズ事務所と吉本興業に、仮に当てはめて考えてみます。

吉本興業型とジャニーズ事務所型ビジネスの違い

「著作権」で回収するか、「出演料」で回収するか

一般的に、ジャニーズ事務所は1人のタレントを育てるために長い年月とリソースを費やすと言われています(投資の集中)。結果、成長して人気となったアイドルのコンサートやCD、DVD販売を初め、物販(マーチャンダイズ)など著作権・ライセンス収入でそれまでの投資を回収します。一方、吉本興業は多くの芸人に「チャンス」を広く与えています。しかし、売れるかどうかは、芸人さんの「努力」と「実力」、そして「運」次第といわれています(機会の平等)。その結果、売れた芸人がテレビやCMなどへ多く出演し多額の出演料を得ます。

「ファン」が顧客か、「メディア」が顧客か

ジャニーズ事務所型のモデルの場合、著作権物を購入するのはそれぞれのアイドルタレントを応援するファンの方たちです(B to C)。一方、吉本興業型のビジネスの場合、所属するタレントにとってメディアやCMに出演した出演料が主な収入源となります。もちろん一般客向けのライブやライセンスビジネスも展開していますが、マスメディアやクライアント(広告代理店など)が重要な「顧客」です(B to B)。

「二次使用」は「宣伝」か「ビジネス」か

「著作権・ライセンス収入の比率が高いビジネス」という視点で考えますと、ネット上などでのコンテンツの「二次使用」に関しては慎重となるのは当然です。これはディズニーなどのアニメ制作会社の多くが多額の投資を行った制作物を厳格に著作権管理するのと同様です。築きあげた一種の「ブランド」(信頼)を守ることも重要です。

一方、対極の考えもあります。テレビやCMなどマスマーケティングの場に多く出演し活躍するために、まずはネット上などでの「クチコミ」を利用して「人気者」となることも必要です。低価格(場合によっては「タダ」)で、ネットやSNS上などでタレントの映像や写真などの二次使用(二次創作)が出回ることに対して、それほどネガティブではない場合の理由はここにあります。「お笑い」という文化が、そもそも子どもたち(時にお笑い芸人同士が)芸人のギャグをものまね(パロディー化)することで、どんどん広がり、その結果流行になっていくことが昔から一般的だからではないでしょうか。「いじってもらってなんぼ」「話題にされてなんぼ」というお笑い文化の伝統によるものなのかもしれません。本来ならば「違法」かもしれない「二次使用」(二次創作やパロディー)にも比較的寛容なのは、広い意味での広報活動と見なして大目にみているのでしょうか。

―――
■アドタイ「FAQ」より https://www.advertimes.com/info/faq/
Q 転載・二次利用したい
A 方法の如何を問わず、販売促進の目的等も含み、商用目的で作成する広告、パンフレット等に無断で利用することを禁じます。例えば「宣伝会議推奨の商品(サービス)」「宣伝会議に掲載されました」などの表現を付して掲載情報を転載・二次利用することはご遠慮ください。
―――

「二次使用」(二次創作)を肯定する意見には「宣伝になるんだからいいじゃないか」というものがありますが、「本当に宣伝になるのか?」という反論や、仮に「宣伝効果」があるとしても、「宣伝するかしないかは、そもそもコンテンツホルダーが決めることだ」(自己決定権)が主張される場合があります。くれぐれもコンテンツの二次使用にはご注意ください。

それではみなさま。また来週。

片岡英彦「片岡英彦のMPR(Marketing PR)な人々」バックナンバー

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片岡 英彦[コミュニケーション・プロデューサー/片岡英彦事務所代表]
片岡 英彦[コミュニケーション・プロデューサー/片岡英彦事務所代表]

1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者として「阪神・淡路大震災」や「オウム事件」の取材を、宣伝プロデューサーとして「電波少年」「伊東家の食卓」「箱根駅伝」等を担当。2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャー。MTVジャパン広報部長を経て、2006年日本マクドナルドマーケティングPR部長。ミクシィのエグゼクティブプロデューサーの後、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援活動の他、フランス・パリに本部を持つ国際NGO「世界の医療団」の広報責任者を務める。マガジンハウス/Webダカーポでインタビューコラム「片岡英彦のNGOな人々」を連載中。

片岡 英彦[コミュニケーション・プロデューサー/片岡英彦事務所代表]

1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者として「阪神・淡路大震災」や「オウム事件」の取材を、宣伝プロデューサーとして「電波少年」「伊東家の食卓」「箱根駅伝」等を担当。2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャー。MTVジャパン広報部長を経て、2006年日本マクドナルドマーケティングPR部長。ミクシィのエグゼクティブプロデューサーの後、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援活動の他、フランス・パリに本部を持つ国際NGO「世界の医療団」の広報責任者を務める。マガジンハウス/Webダカーポでインタビューコラム「片岡英彦のNGOな人々」を連載中。

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