AKB48とローカルアイドルブームにみる「モーメンタム・ビルディング」とは

明けましておめでとうございます。片岡英彦です。ことしも引き続き「戦略広報」の「型」について、様々な切り口から紹介していきたいと思います。今回のテーマは「モーメンタム・ビルディング」です。「モーメンタム・ビルディング」とはあまり聞き慣れない言葉かもしれません。ここでは、前回の「Demand Creation(需要創出)」実現の前提となる、市場や需要の「Momentum(勢い、はずみ、加速)」を生み出すためには、どうしたらよいのか考えて見たいと思います。

多くの宣伝、広報、マーケティング担当者が新規の「需要」(市場)を創出したいと考えますがなかなか実現はできません。需要創出の前提として、戦略広報の視点から、よく「空気作り」と言う言葉が使われますが、これもどうにも「ふわふわ」とした言葉で、いったい「何が」空気で、「どうすれば」空気を作れるのかよくわかりません。紹介される成功事例は、「商品」ではなく、結局は「商品カテゴリー」の訴求に過ぎないこともあります。また、成功はしたものの、偶然の幸運が重なったケースの場合もあります。

「モーメンタム・ビルディング」を考える上で、重要なポイントは、下記の3つだと思います。

Momentum Buildingの3つのポイント

  • カスタマー・インサイト(顧客目線での洞察力)
  • 対抗軸の設定(「主流」(メインストリーム)の研究とリスペクト)
  • 自分の「弱み」を活かし、相手の「強み」に勝る(SWOT分析の「ウラ技」)

上記の3つを、人気絶頂アイドル「AKB」と、最近ブームの「ローカルアイドル(ご当地アイドル)」に当てはめてみます。

カスタマー・インサイト

12月27日の決勝大会でグランプリを受賞した、まなみのりさ

AKBブームの勢いは留まることを知りませんが、一方、昨年、12月27日に「ご当地アイドルNo.1決定戦. 『U.M.U AWARD 2011』~地域活性アイドル大図鑑~Supported by DMM.com」という、ご当地アイドルの全国オーディションが開催されメディアを賑やかしました。国民的人気のAKBとは対照的に、地方で活躍する「ご当地アイドル」に、今、注目が集まっています。

ここで大切なのは、こうした市場(顧客)の新たな動きを洞察する「インサイト」です。AKBブームの成功はもちろんですが、すでに去年から「ご当地アイドル」に注目し全国オーディションを開催した主催者の「カスタマー・インサイト」には頭が下がります。「Momentum Building」とは、生産者やマーケッターの都合ではなく、顧客の視点で「時流」を大きくつかむことなしには為し得ません。「インサイト」(洞察力)がなければ「時流」も「空気」も生まれないからです。

対抗軸

海外にまで進出するAKB、一方でご当地アイドルたちは逆を向いています。地元の県や町や特産物、時には商店街の広報活動など多くのご当地アイドルたちは、彼女たちの「使命」を背負っています。昨年グランプリを獲得した「Negicco(ねぎっこ)」は、新潟名産「やわ肌ねぎ」のPRのためにデビューしたユニットでした。今年グランプリを獲得した「まなみのりさ」も、すでにローカルアイドルのトップランナーとして全国的に注目されてきていますが、あくまで活動拠点は地元、広島です。多くの「ご当地アイドル」たちや、その熱烈なファンたちは、AKB的なる全国区のアイドルを「リスペクト」しつつも、無意識のうちに「全国区」に対する「ご当地」という「対抗軸」を生み出しています。

どんな市場であれ、主流派(アイドル)による市場独占が高まると、その「メインストリーム」からは外れる顧客(ファン)が生まれます。その「受け皿」が必要となります。単に主流(メインストリーム)を「マネ」て「対抗」するのでは、新たな「Momentum」にはなならいのです、「Momentum Building」の本質は、すでに存在する主流(メインストリーム)への「リスペクト」と、「その対抗軸(アンチテーゼ)は何か」という設定(新たな視点)での切り込みが重要です。

「弱み」で「強み」を狙う

最近は広報職の方からも、よくSWOT分析表を見て意見をくださいと言われることがあります。ポイントは「その分析結果を、結局、どう活用するの?」です。

通常の活用マニュアルにあるのは・・・

・1 脅威(T)を回避する(しかし、たいてい外部要因なので回避できない)
・2 弱み(W)を減らす(しかし、すぐにはできない)
・3 強み(S)を伸ばす(しかし、強みがそれほどの強みではない)
・4 強み(S)を追い風(O)に乗せる(しかし、追い風が弱い)
で、結局、うまくいかないことが多いようです。

「Momentum Building」を意識する場合には・・・

・5 自分の弱み(W)で相手の強み(S)に勝る

という視点で考えてみるのはどうでしょうか?

かつて百貨店は「大型店舗を持つ」という「強み」がありました。通販会社は「店舗がない」という「弱み」を逆手にとり、「カタログ販売」という、「Momentum Building」に成功しました。また、後にカタログ通販会社の「強み」である「カタログ」に対し、ネット系通販会社は「紙のカタログ配布網がない」という「弱み」を逆手にとって、「ネットカタログでの販売」という「Momentum Building」に成功しました。

「兵法」(孫子)より
『善く戦う者は、その勢いは険にして、その節は短なり』
(良い戦い方とは、勢いに乗じて一瞬で力を発揮する)

AKBには、「歌」「ダンス」「ルックス」に絶対的な「強み」があります。仮に、ご当地アイドルブームがさらに拡大し市場に定着するならば、「ご当地アイドル」の現在の「弱み」こそが「追い風」になった時なのでしょう。

確かに、最近は、「一流品」や「高級品」などの「完成度」の高さよりも、「素朴」「手作り」「自ら参加」など、「味わい」「地域性」「参加意識」「使命感」などを意識した商材を好む傾向がすでにあるような気もします。「既存の概念」をまずは捨て、自らのインサイトを磨き、これから「勢い」(Momentum)が築かれていくであろう相手と一緒に企業ブランドや商品ブランドの需要を創出していくのも、また一考です。

来週は「First Choice」という視点で、紅白歌合戦の女王(!?)小林幸子について考察します。

それではみなさま。また来週。

片岡英彦「片岡英彦のMPR(Marketing PR)な人々」バックナンバー

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片岡 英彦[コミュニケーション・プロデューサー/片岡英彦事務所代表]
片岡 英彦[コミュニケーション・プロデューサー/片岡英彦事務所代表]

1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者として「阪神・淡路大震災」や「オウム事件」の取材を、宣伝プロデューサーとして「電波少年」「伊東家の食卓」「箱根駅伝」等を担当。2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャー。MTVジャパン広報部長を経て、2006年日本マクドナルドマーケティングPR部長。ミクシィのエグゼクティブプロデューサーの後、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援活動の他、フランス・パリに本部を持つ国際NGO「世界の医療団」の広報責任者を務める。マガジンハウス/Webダカーポでインタビューコラム「片岡英彦のNGOな人々」を連載中。

片岡 英彦[コミュニケーション・プロデューサー/片岡英彦事務所代表]

1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者として「阪神・淡路大震災」や「オウム事件」の取材を、宣伝プロデューサーとして「電波少年」「伊東家の食卓」「箱根駅伝」等を担当。2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャー。MTVジャパン広報部長を経て、2006年日本マクドナルドマーケティングPR部長。ミクシィのエグゼクティブプロデューサーの後、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援活動の他、フランス・パリに本部を持つ国際NGO「世界の医療団」の広報責任者を務める。マガジンハウス/Webダカーポでインタビューコラム「片岡英彦のNGOな人々」を連載中。

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