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【中国で勝つマーケティング】日本とはスケールが段違い

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中国への進出や本格的なビジネス展開を考える読者を対象に、『宣伝会議』(毎月1日発売号)では中国市場に向き合うコツを紹介する連載「中国で勝つマーケティング」を掲載しています。日中間でビジネス・コンサルティングを手がける大西正也氏(チャイナ・コンシェルジュ代表取締役社長)が分かりやすく解説します。
※本記事は、雑誌『宣伝会議』2011年12月1日号(連載2回目)に掲載されたものです。

大西正也(チャイナ・コンシェルジュ代表取締役社長)

中国に進出するなら、上海?北京?

多くの人がそのどちらかだと思っているようです。特に「やはりまず、上海でしょう」と訳知り顔でいう人も多いから困ります。買い物や観光に行くわけじゃありません。

今回は、中国というマーケットの多様性と、その特性をわかっていただき、「何をどうするか?」によって、進出するマーケット、ターゲットとする市場は全然違ってくる、ということを知っておいて欲しいと思います。

地方マーケットでもとにかく大きい

遼寧省の省都・瀋陽市。地方都市ながら、同省の人口は4500万人にも及ぶ。

遼寧省の省都・瀋陽市。地方都市ながら、同省の人口は4500万人にも及ぶ。

九州のある県の方と瀋陽(沈陽・遼寧省)に進出FS(フィージビリティスタディー、予備調査)へ行った時です。

「遼寧省なんて田舎に会社作っても、マーケットが小さすぎるから無駄ですかね?」

その方の会社がビジネスをしている県は、人口85万人、GDP約2億ドル(概算)。かたや遼寧省は、人口4500万人、GDP2300億ドル。どうして自分の県の百倍のサイズのマーケットを『小さすぎる』と思ったのでしょうか。多分、ご存じなかっただけだと思います。

人口・GDPだけで一概には言えませんが、売る商品や、流通方法、作るだけ? 販売もする? ……など、冷静に判断しましょう。自社の商品・サービスで競争優位性のあるものを、優位性ある(勝てる)場所で売るためには、上海は世界中の競合があまりにもひしめいています。それだけの覚悟や投資が必要です。ならば地方都市・遼寧省で勝負するのも一つの作戦かもしれません。広州、四川省……、調べれば調べるだけ「ここでもできそう」「ここなら勝てそう」という場所が見つかるかもしれません。

本気で勝負するなら、マクロ調査に加え、ミクロかつ多面的な調査が必要です。

上海で勝負するなら世界と闘うつもりで

私は、初回で申し上げたように、「中国のことはわからない」と考えています。

中国在住経験12年、中国の4つの地域に会社を設立して17年経っていても、です。毎年の変化も激しく、地域によって特性が全然違う。まして住んだことのない場所のことなど、全くわかりません。

「いつも相談しているコンサルティング会社から上海を勧められた」とか「東京で働く中国人社員が、大連出身だから大連にコネがあるので…」という進出理由をよく聞きますが、それこそまさにバクチです。コンサルティング会社の持っている拠点や、過去の実績、得意なエリアなどを知った上で、重複のない複数(少なくとも3社以上)の会社に相談したうえで判断するのが良いと思います。

すでに最近の上海では、街を歩く人達を見ても、若い人の遊びやファッションは急激に成長し、先進国と変わらないライフスタイルになってきています。世界中の強豪が進出している上海でも、十分勝算があるなら、やはり巨大マーケットは上海です。

ここでも注意していただきたいのが、家賃や人件費も、日本とさほど変わらなくなってきている、ということ。見かけの人件費はまだ安いですが、給与の約40~60%の保険や福利厚生費がかかりますし、マネージャークラスとなると適任者がなかなか育たないために同業他社との奪い合いとなり、給与は年々高騰しています。

「中国全土の平均は」「日本と比べて安い」だけで、日本の地方給与レベルと先進都市・上海の比較をして、「中国は人件費が安い」とは言えません。

さらに、商品や企業の認知度を上げようとするなら、日本と同じか、それ以上の広告・宣伝費を確保しておくことは重要です。ちなみに、ある上海の広告会社による調査では、P&Gの中国における1年の広告費予算は4000億円と言われています。これはバブル時の日本の大手自動車会社の予算の4倍以上ということです。

まだ大手が進出していない1級都市が狙い目

中国では政府が、その人口や都市の発展状況によって、都市にランクを付けて発表します。例えば1級都市なら、北京、天津、沈阳、大连、哈尔滨、济南、青岛、南京、上海、杭州、武汉、广州、深圳、香港、澳门、重庆、成都、西安の18都市があります。

これを見てもまだ皆さんの知らない都市が、上海と並んでランク付けされているのがよくわかるでしょう。すべて大阪や横浜を上回る大都市です。しかも成長の余地が十分ある都市です。これらの都市に進出した、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)分野の企業や加工工場は、人件費の上昇が激しく、すでに撤退や移転が始まっています。逆に言うとそれだけ成長していて未開拓の都市があると考えるべきです。

上海などの大都市と比べると、まだまだ販売現場における広告手法などは未熟ですし、一流の広告代理店も支店などがないことも多く、セールスプロモーション手法やクリエイティブなどには皆さん困っておられます。日本で実績のある会社の進出は、多くの会社が待ち焦がれていることでしょう。


おおにし・まさや
リクルートを経て中国在住12年、広告会社を北京・上海・大連・香港に創業し17年。現在東京を本拠地に、中国・香港の富裕層向けインバウンド事業に携わる。「宣伝会議」の中国ビジネス関連講座の講師も務める。北海道情報システムWGメンバー、沖縄国際観光戦略モデル事業、成田空港成長戦略会議などに従事。

【シリーズ:中国で勝つマーケティング】