「あまりにシュールすぎる」「異常な中毒性」「狂っている…!」——YouTubeに公開されたあるムービーが、こうしたコメントと共に次々とシェアされ、話題が広がった。
ムービー内でひたすら繰り返される「♪鳩に困ったら雨宮~」という独特のフレーズが耳について離れなくなる、1分あまりのムービー。愛知・岐阜・三重の東海3県に事業所を置き、害虫・害獣駆除サービスを手掛ける雨宮が、同社のハト対策・駆除サービスの認知拡大を目的に制作したものだ。
企画制作は、新東通信と、「NHKみんなのうた」のアニメーションなどを手掛けるクリエイティブユニット・AC部、名古屋のクリエイティブエージェンシー・kura-kura、そして名古屋のデザイン事務所・テリーファンクプロダクツによる。
競合が多く、ネット業界や外壁塗装業界など他業種からの参入もあるというハト駆除業界。競争が激しい市場環境にあって、自社の認知を高めたいと、今回のユニークな映像制作に踏み切った。
「新規参入業者の中には、生物学的ノウハウがなく、単にネットを張るだけで施工を終わらせるなど、問題があるところが少なくないと聞きます。一方で当社は、害虫・害獣対策と建築の2つの事業を手掛けており、それを生かした施工で実績を積んでいます。しかし、東海エリアではシロアリ駆除サービスの印象が強く、『シロアリ駆除しかやっていない』と思われていることが課題。当社事業は住宅のあらゆる問題をカバーしており、リフォームを含むさまざまなメンテナンス・検査を手掛けています。住宅全般の悩みに応えられる会社であることを認知・理解していただくきっかけとして、今回のムービーの制作に至りました」と雨宮の担当者は話す。
現代美術家の村上隆氏や芸術ユニットの明和電機、イラストレーターのオソンジュン氏といった著名人もSNSで取り上げたことで、Web上で一気に話題が広がった同ムービーだが、元はOOHを起点としたキャンペーン。
「ハトのフンまみれになったサラリーマン」のオブジェを名古屋・栄の街頭に設置し、そこに貼付されたQRコードを読み込ませることで、ムービーを公開している特設サイトに誘引する狙いがあった。特設サイトの最下部には、雨宮の企業サイトへのリンクが貼られている。
「“平和の象徴”と表現されることもあるハトだが、そのフンによる悪臭、病原菌の媒介が健康被害につながる可能性があることを認知してもらい、そこからハト駆除の必要性を感じてもらおうと考えました。オブジェには、通行人の約7割が反応を示し、多くの人がSNSへの書き込みを行ったようです」(前出の担当者)。
ムービーは、公開から1週間でYouTubeでの再生回数が20万回を突破、約1カ月が経った現在では53万回を超えている。特設サイトには1万人以上を誘引することができたという。
同社の過去の宣伝・広告活動は、チラシやテレビCMを含め、至って一般的な表現を用いてきた。しかし、今回は「シロアリ駆除だけではない」ということを強く訴求したかったこと、また特に同社に対する認知が低い若年層へ効果的にアプローチしたいと考えたことから、あえてこうした表現に賛同したという。
「話題化はしましたが、達成度で言うと20%くらい。今回の話題化をきっかけに、認知→理解→刈り取りと展開していくための施策を打ち出していきたいと考えています」(同)と話した。
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