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就活時期の見直しに屈しない採用活動は、出来ていたのか?(常見陽平)

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新卒学生の採用期間の短縮と繰り下げによって優秀な人材の青田買いが加速し、企業と学生のコミュニケーションのあり方が変化している。こうした変化に対応している企業は、これまでの人事の視点に加えて、伝えたい情報を適切に学生に伝え、関係を構築していく広報とマーケティングの視点から採用戦略を見直している。そこで宣伝会議では、採用におけるコミュニケーション戦略の設計とその実践ノウハウを学ぶ「採用広報講座」を開講する。その講師でありキャリア、若者論などに詳しい常見陽平氏に採用活動のポイントを聞いた。

納得のいく採用を実現できている企業

画像提供:shutterstock

「就活時期の見直しで、学生も企業も混乱ってメディアは書きますけど…。他社に学生をひっくり返された企業は、“そういう採用活動”をしていたのですよね…」

イケている採用担当者と会うたび、こんな話になる。そして、採用活動がいつになろうと、彼らは動じない。

2016年度の採用活動は、なんせ就活時期繰り下げ問題が直撃した。採用広報活動(説明会、採用広告での告知など)が大学4年生の3月に(前年度までは大学3年生の12月)、選考活動(面接など)が大学4年生の8月に(前年度までは大学4年生の4月)繰り下げとなった。

この件は、決まった2013年4月から賛否を呼んだ。その見直し初年度となった今年は、予想通り混乱し、フライングする企業が相次いだ一方、内定出しの時期を少なくとも形式上は遵守した大手企業に内定者をひっくり返される中堅・中小企業の悲鳴も話題となった。

内定辞退を阻止するための「オワハラ(就活終われハラスメント)」も問題となった。この言葉は2015年度の「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされた。もともとは就活の早期化・長期化の是正と、学生の学習機会の確保などを目的に行われた施策ではあるが、かえって長期化し、学業にも影響を与えてしまった。

メディアにはこんな記事ばかりが載る。私もこの件で、何度も執筆やコメントの依頼をいただいた。これはこれで事実ではある。官庁や就職情報会社が発表するデータを見てもどうやら確かだ。

しかし、この「混乱」を物ともせず、大手企業にも内定者をひっくり返されず、納得のいく採用活動を実現できている企業は存在する。彼らは別にこの手のスケジュール変更には動じない。そもそも、採用のスケジュールは大筋が決まっていても、採用で競合する各社が早めに仕掛けてきたりするなど、毎年ドラマがあるものである。

彼らには戦略がある。やることと、やらないことが明確だ(一方、模索、実験も怠らない)。求める人材を明確化した上で、彼ら彼女たちがどこにいるのか、何にソソられるのかなどを熟知している。彼ら彼女たちが企業と出会い、入社を喜んで決断し、その後、成長、活躍していくまでの打ち手を明確にしている。他社の事例もベンチマークするものの、常に自社としてのベストを考える。いちいち当たり前のことのようで、これをやりきっていない企業が多すぎる。

もちろん、企業の知名度などの差や、業界自体が不人気なんていうこともある。経営陣と現場の板挟みになることもあるだろう。しかし、それをなんとかするのが採用担当者の醍醐味である。

インターンシップの強化、ソーシャルメディアの活用など手法の模索は常に続くのだが、採用の基本は変わらないと考えている。学生と企業のベストで幸せな出会いをどうするか。それだけだ。

今年も宣伝会議の採用広報セミナーがやってきた。改めて、企業の採用担当者たちと向き合い、採用活動に関わる喜びを共有しあいたいと思う。今年も受講生と会うのが楽しみだ。さて、今年はどんなドラマがあるだろうか。


常見 陽平 氏
評論家・コラムニスト

一橋大学商学部卒業。リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社を経てフリーに。2014年3月に一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。著書に『なぜ、あの中小企業ばかりに優秀な人材が集まるのか?』(日刊工業新聞社)、『「 就社 」志向の研究』(KADOKAWA)、『「できる人」という幻想』(NHK出版)。


常見氏が講師を務める、
採用におけるコミュニケーション戦略の設計とその実践ノウハウを学ぶ
採用広報講座
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