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コラム

世界のクリエーティブ

「シンプルに」

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A5サイズの紙にアイデアを書いてプレゼンする。そのくらいシンプルがちょうどいい(クリックで拡大)

具体的に僕がどのくらいシンプルなプレゼンをしているかというと、大体A5(A5を作るのが面倒な場合はA4)の紙一枚に1アイデア(絵と簡単な説明文)を書いてミーティングに持っていきます。1枚で1キャンペーンの全体像がつかめるようなくらいシンプルにアイデアを削ぎ落として説明する。そもそもアイデア(特に広告のアイデア)はそのくらいシンプルじゃなくちゃ必要な数の人に届かないと思っています。

このとき、日本での経験ですごく役立っているのが絵やコンテを書く技術です。これは博報堂時代にCMプランナーをやっていてしこたま鍛えられた賜物なわけですが、こっちのクリエーティブはこれが巧(うま)くできる人が実はあまりいない。僕は頭の中に完成した映像が浮かばないとアイデアをプレゼンできない性質なのですが、どうもこっちのクリエーティブはコピーライター&アートディレクターのチームという分業制のせいか、そういう風な思考をしていないようなのです。だからこの映像を絵に起こすスキルは、すごく便利で重宝しています。さらには日本の15秒CM文化というのも、実はアイデアを要約するという意味ではすごくいい訓練になっていたんだなぁとも感じてます。

そんな風にシンプルにまとめたつもりの渾身(こんしん)のアイデアでも、なかなかわかってもらえない場合もあります。それはきっと日本でもどこでも同じなんじゃないでしょうか。そんなとき僕は、自分で映像やらコンテンツのプロトタイプを作ってしまうようにしています。古くはJINROのダンスも映像を撮影してチームにプレゼンしたし、昨年のアックスのキャンペーンは当時在籍していたBBHの受付嬢に頼み込んでビデオを撮ってプレゼンしました。先日も、ワイデンのビルの屋上からマシュマロ落として、口でキャッチしながらアイデアを説明したりしてます。

あきらめが悪いとも言えますが、僕はアイデアを考えるプロセスも、アイデアを説明するプロセスも、アウトプットと同様に重要なことだと考えています。自分でわかってもらう努力とそのためのプロセス自体にもアイデアを持たないといけない。ふと毎日の作業の繰り返しで一定のプロセスに慣れてしまうことがありますが、それはすごく危険なことだと思う。

いいアイデアも実現しないとただのラクガキな訳ですから。よく深夜遅くまで残って仕事していて、掃除のおばちゃんに「あんたいつもラクガキしてるだけでいいお給料もらえててうらやましいわぁ」とか言われるたびに、つくづくそう思います。

はてさて、次回は海外の代理店におけるコピーライター&アートディレクターのチーム制やらスタッフィングの考え方といった社内制作プロセスについてお話しできればと思っています。

ではでは。

※隔週土曜日連載(全7回)。次回は12月25日です。

【お知らせ】川村さんが手がけたSOURの新作「映し鏡」のミュージックビデオが公開されました。ツイッターやフェースブックと連動したインタラクティブなもので、早くもネット上で話題になっています。ブラウザーは「Safari」か「Chrome」で見られます(川村さんによると、マックのSafariがお勧めです)ので、ぜひ体験してみてください。(編集部)

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