ベラルーシ共和国ベトカ地区病院長 ジミナ・ナジェージダ
チェルノブイリ原発事故で放射能の7割超がベラルーシへ


「チェルノブイリで起こったこと」と題する講演で話すジミナ・ナジェージダ院長(右)と、集まった松本市民たち(左)。講演は日本チェルノブイリ連帯基金が主催し、11月10日に松本市中央公民館で行われた。
私の病院はベラルーシ共和国のゴメリ州ベトカ地区にあります。チェルノブイリ原発の事故で放出された放射性核種(物質)の約75%がベラルーシ共和国に降下しました。ベトカ地区の50%は1キロ平方メートルあたり5キュリー(Ci)、すなわち18.5万ベクレル(Bq)を超える放射能が検出されます(1 Ciは3.7×10の10乗Bq)。つまり、1年間で許容実効線量1ミリシーベルト(mSv)を超える高濃度汚染地帯です。事故による経済的被害は甚大です。農業で生活していたこの地域の多くの人々は生活基盤を失い、移住を余儀なくされました。
事故は1986年4月26日に起き、12月には石棺で覆われましたが、それまでに広大な地域に膨大な放射性物質(核種)が降下しました。
1平方メートルあたり148万Bq(40Ci)以上は緊急移住区域、55.5~148万Bqは逐次移住区域、18.5~55.5万Bqは任意移住区域、3.7~18.5万Bqは定期的放射線管理区域とされました。定期的放射線管理区域は年間の放射線量が1mSvを超えることになります。
1mSvを超える地域の住民には国から2004年までに移住するように勧告が出され、多くの人々が故郷を離れました。事故から間もない時期に建てられた移住用の住宅がありますが、後になってここも放射線量が高いことがわかり、再度移住の勧告が出されました。しかし、故郷を離れたくない人たち―サマショール―がいて、年間実効線量が5mSvを超える地区にも、約10人の方が住んでいます。