コラム

最新米国小売業からプロモーションをハカる。

オンライン・ツー・オフライン(O2O)は、これからどう近づくか?

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オンライン(ネット)とオフライン(リアルな暮らしやリアルな買物やサービスの利用)は、スマートフォンの登場によって、その距離が変わって来ました。日本ではパソコンの普及によりウェブサイトへのアクセスが高まり始めた頃、テレビCMでは「つづきはwebで!」と言うキャッチ・フレーズによって、マス・メディアからネットへ視聴者を導くことが始まりでした。今、国内の流通小売業の売上が年々減少する中で、O2O(Online to Offline)への取組みが大きな課題になっています。スマートフォンやタブレット端末などネットによる買物環境が日本よりも早く進む米国の流通小売業での展開をハカり、これからの日本のプロモーションについて考えたいと思います。

米国流通小売業における O2Oの取組みについて。

まず、このコラムでも以前スマートフォンの国内の普及率について触れました。米国では約46%が、日本では約13%と言われます。(いくつかのデータがあり、日本の普及率は最大23%との紹介もあります)今、米国の生活スタイルは富裕層・貧困層の極端な2極化をしめしていますが、流通小売業や取引をするメーカーも、価格訴求のあり方を考える一方で、スマートフォンを利用した来店促進や購買促進を目的にした展開に、ここ数年最も力を入れています。流通小売業のスマートフォン(オンライン)の具体的な活用法を見ると主に次の3タイプあります。

  1. 販売する商品の値段や商品に関連する情報の提供。
    (商品の入荷状況やお店でのイベントなどに関する様々な情報提供も含みます)
  2. この情報提供に合わせたクーポンなどの割引特典やサンプリング情報の配信。
    (店舗周辺にいる場合や来店時に得られるサービス提供などGPS機能と連動した取組みも見られます)
  3. スマートフォンを利用した買物決済。

これらの取組みに小売業毎の特徴や個性を打ち出しながら展開しています。

その中で、米国での事例を2つ紹介します。

ひとつは高級デパートの「ニーマン・マーカス」です。このお店は、フォードやレクサスと言った特別仕様の高級車を販売することでも知られています。買物客がiphoneのアプリ「NMサービス」でチェック・インを行うと、その買物客の専任のスタッフに伝えられ、購買履歴や購買傾向をチェック出来ます。専任スタッフの接客のスキルによっては購入額が最大で10倍近くも異なるとのことです。アプリは無料で、店内にあるロケーション・センサーが専任スタッフの位置を特定することも可能で、買物客も専任スタッフの状況が同時に入手出来ます。つまりリアルな店舗内でFace to Face で相談をすることも行えます。また、優良買物客(ロイヤル・カスタマー向け)のイベント情報や新商品情報もアプリから受け取ることが出来て、気に入った商品をマークする機能もあります。

もう1つの事例は、米国のスーパーマーケットで売場づくりやサービス、店舗スタッフの対応など最も高い評価を得ている「ホールフーズマーケット」。西海岸を中心に展開する同チェーンでは、2010年より「ソーシャルメディア戦略」に力を注いでいます。同社のホームページでは、生活催事の展開や主力商品の訴求に合わせて、Youtubeを利用した動画(ショート・ムービー)で商品やお店のサービスをわかりやすく、またコミカルに紹介しています。

ホールフーズマーケットのホームページから。プロモーションのテーマに 合わせた動画がアップされて見る人に来店や買物の楽しさを伝えています。

バレンタインやハロウィーン、クリスマスには店員さんが、時にはお店を買物に利用しているお客さんが出演して、ギフトや料理や家の中の飾り付けなどを紹介します。長い展開だとvol1(1話)からvol7(7話)迄あります。単なる商品の紹介ではなく、そこには「作り手、生産者のこだわり」「買物をする楽しさ」「誰かと一緒に料理を作ることやギフトを選んだり贈る時の工夫」と言った物語(ストーリー)があります。全米で高い評価の「ホールフーズマーケット」については、「売場づくりとチームでブランディング」をテーマに今後コラムで紹介します。「売場に長くいたい」そう思えるお店であり、スタッフがいます。

これら米国での2つの事例からハカれること。

現状のオンラインとオフラインの活用や影響について捉えた場合、値段やサービスに関する情報の提供やクーポンをはじめとした利益の還元(インセンティブ)が中心にあります。今回取り上げた高級デパートの「ニーマン・マーカス」では、専任のスタッフと買物客との関係が構築され、米国で高い評価を得るスーパーマーケットの「ホールフーズマーケット」では、店舗で働くスタッフや自分たちと同じ買物客による商品ほかの紹介やアプローチから新しいコミュニティや意識が生まれています。

買物客や生活者は常にネットに接続された状態になり、値段を調べては店舗に足を運んだり、お得なクーポンをダウンロードやプリントアウトして実際の店舗で買物や食事をする行動はこれからも増えるでしょう。デジタルの活用によるサービスの普及など、時代に即した使い方が起きると思います。ただ一方で、買物客が車や自転車に乗って時間を掛けてわざわざ来店する店舗には、「楽しさ」や「リアルなコミュニティ」を求める気持ちもあります。買物客が求めるもの〈ニーズ〉は、価格要素だけではないと言うことです。オンラインの世界で見ることが出来る豊かな情報と、リアルな人(買物客やその身近な人や店舗で働くスタッフなども含めて)やリアルな店舗(様々な商品を手に取って実際に触れたり、エモーションみたいなものを感じたり)とを結び付ける考え方が、これからの社会でO2O(Online to Offline)の関係をより上手に機能させ繋げるポイントと思います。

次回のテーマは、米国の商品パッケージ アナログな持ち味とデジタルを使った新しい魅力についてです。

倉林武也 「最新米国小売業からプロモーションをハカる」バックナンバー

第11回「米国の商品パッケージ アナログな持ち味とデジタルを使った新しい魅力」はこちら

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