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コラム

i(アイ)トレンド

Windows8のローンチを通じてクロスメディアでの複合コミュニケーションの重要性をあらためて実感

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マイクロソフトに移籍してからというもの、連載を1回更新しただけでしばらく複合要因的な忙しさで更新できなかったのであるが、一段落したので再開したい。

まずは画期的なOS(OS:オペレーティングシステム。コンピューターの基本ソフト)として発売されたWindows 8のリニューアルキャンペーンに接して感じた内容に関して書きたいと思う。

最初にお断りしておきたいのは、当然このような大きな製品のローンチに関しては膨大な数の関係者がかなり前から準備をしており、筆者は最近参画したばかりで大きくはかかわっていないということである。その意味でこの大きなローンチにかかわった本当に多くの関係者の皆様に敬意を表したい。

皆様もよくご存じのようにWindows 8は世界同時発売であり、日本は時差などの関係から幸いにもその最初のイベントを飾らせていただいた。筆者は17年前のWindows 95発売の時も秋葉原にいたのであるが、今回はそれ以上の盛り上がりを中の人として携わることができて非常に感慨深いものがあった。そしてその模様はニューヨークのタイムズスクエアで行われたローンチイベントは世界のメインを飾るそのイベントでも紹介されたのである。

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日本が世界最大の製品数を発売することとなっている。年末までになんと13社のOEMメーカーから250機種以上が登場するので、非常に多くの選択肢が消費者に提示されることとなっており、そのメーカーを一堂に集めた発売記念イベントも行われたのである。

普段であれば競合相手でもある電機メーカーの各社がこのように一堂に会することは珍しく、その意味でも大きな期待が込められていることが感じられるのである。そしてそれに応えるように、Windows 8は発売当日の10月26日にはツイッターのトレンドとして上がっていたのである。

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Windows 8の画期的なところは多数あるが、特筆すべきはタブレットにも対応するタッチ機能を搭載したことであろう。スタート画面には独自の新しいユーザーインターフェースを採用している。それは自分の好きなアプリケーションをタイル型に配置し横にどんどんスクロールすることによって操作してゆく形のものであり、この機能は特にタッチパネルに対応したパソコンやタブレットにおいては便利なものになっているのである。そして、ローンチ時の各種コミュニケーションでは特にこの機能をログイン時に文字の入力が不要になるピクチャーパスワードの機能などとともに紹介している。

Windows 8の新商品もタッチパネル対応のものが多く、テレビ報道や店頭ディスプレーでもこの新しいインターフェースが大きく取り上げられていた。しかし、このように早期に大きな認知が生まれることにより都市伝説的な誤解も生じていったのである。

「Windows 8をいれてもタッチパネルにならない」といった誤解が広がった

マイクロソフトではWindows 8のローンチに合わせて通常より各種サポートを拡充させて臨んできたのであるが、発売当日の一部テレビのニュースで「Windows 8をインストールしたからと言って自分のパソコンがタッチ対応になるものではありませんよ」という報道があった。そして、その内容は発達しているソーシャルメディアによってものすごいスピードで拡散していったのである。

正直「Windows 8を既存のパソコンにインストールしたらタッチ対応になる」という発想をユーザーは持つのでは?、ということをマイクロソフト側では事前には大きな話題になると想定していなかった。そういった誤解がこれ以上広がってはいけない、と至急その対策を考え実行している段階である。その意味では準備不足もあっただろうし、想定よりも早く製品の認知がアーリーアダプター以外にも広まっていったといえるであろうし、何よりもソーシャルメディアの発達がこのような事象を加速させたのではないだろうか?

筆者の前職の飲料と比べて、IT業界の製品やサービスは複雑で理解が難しいという側面があると感じている。Windows 8にも色々な機能があり、それを全部理解していただくためには膨大なコミュニケーションが必要となる。しかし、消費者にいち早く効率的に製品を認知してもらうためにはテレビCMなどフォーマットが決まっているリーチ型の広告活用が必要で、その限られた表現の中では一番訴求すべき特徴をハイライトしてゆく必要があるため、すべてを伝えることができない。それを補完するためには、雑誌やインターネットの編集タイアップやソーシャルメディアでのインフルエンサーの啓蒙活動が必要になるだろう。

筆者が今回の件で、次回より実施しようと思ったことはまず、ソーシャルメディア上のインフルエンサーを含むブランドの「ファン」に直接アプローチすべきであったということである。製品情報は限られているのであり、ディスクローズのポリシーはあるものの守秘義務を担保した上で事前にインプットができれば、ソーシャルに拡散する前に止められたかもしれなかったかもしれない。あるいは、そのような反応が起こる可能性を事前にキャッチできていたら、FAQを用意したり、タッチパネルに関する注意喚起を盛り込めたかもしれない。そして現在、実際にそのような活動を始めて年末商戦に向けて活動をしている最中である。

その他にも「従来のデスクトップ画面が使えない」(実際は切り替えて使える)や「従来のオフィスのようなソフトウェアが使えない」(実際にはバージョンにもよるが使えるものも多い)といった声も上がってきている。ソーシャルメディアで声が加速的に広まる時代に際してあらためて色々なメディア(Owned, Earned, Shared, Paid)をどのように活用してゆくか、メディアごとの役割、投資額と発売前も含めたそのタイミングをもう一度見直すべきではないかと考えているのである。

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