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コラム

アドタイ・デイズ 2013

【アドタイ・デイズ】(9)広告界に求められる人材とは

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「広告界の未来を構想する」をテーマにしたイベント「AdverTimes DAYS(アドタイ・デイズ)2013」(主催・宣伝会議)が3月13日と14日、東京都千代田区の東京国際フォーラムで開かれ、2日間で9725人の方に来場いただきました。雑誌「宣伝会議」の創刊60周年(2014年4月)を控えた「宣伝会議60周年イヤー」の皮切りであり、本サイト発の初めてのイベントでもあります。2日間のセミナーの一部を本欄で紹介します。

アドタイ・デイズの2日目(3月14日)は「広告界に今後求められる人材」をテーマにしたパネルディスカッションが開かれた。登壇したのは、電通を経てトレンダーズでドクターエステ・コスメ専門サイト「キレナビ」の編集長として活躍する伊藤春香さん、博報堂を経て編集者・ライターに転身し、現在は人気ニュースサイトの編集を手掛ける中川淳一郎さん、NEC、博報堂、電通などを経て、コミュニケーション領域のプランニング会社「イグナイト」の社長を務める笠松良彦さんの3人。仕事の獲得に仕方から人付き合いにまで話が及んだ。

<登壇者>
トレンダーズ 「キレナビ」編集長 伊藤春香氏
ニュースサイト編集者 中川淳一郎氏
イグナイト 代表取締役 コミュニケーション・デザイナー 笠松良彦氏

生活者は何も変わっていない

――生活者が変わり、世の中が変わったから、私たちも変わらなきゃいけないといった話が広告やマスコミの世界ではよく聞かれます。皆さんはどう思いますか。

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伊藤春香氏
ドクターエステ・コスメ専門サイト「キレナビ」編集長/ソーシャル焼き肉マッチングサービス「肉会」代表/週末作家。2009年、慶應大学卒業後、電通に入社。中部支社勤務を経て、クリエーティブ局コピーライターに。2011年12月にトレンダーズに入社し現職。在学中からの愛称「はあちゅう」名で幅広く活動する。

中川 人間は本質的に何も変わっていないと思います。誰でもモテたいと思うし、腹が減ったらご飯食べたくなるし、ご飯食べたら排泄したいという欲求は変わりませんから。時代が変わったというのも嘘です。いつの世も「時代は変化している」と言うわけで。僕が会社員として過ごした90年代後半でも「今までのマーケティング手法は通用しない」とかみんな言ってましたよ。

笠松 全く同じ意見です。生活者は特に変わっていないと思います。変わったのは環境と道具ですね。

伊藤 私も同じです。ソーシャルメディアの時代になって情報の量やスピードは変わっていると思いますが、欲求部分では基本的に一緒じゃないかと思います。

酒の席で獲得した仕事ほど長く続いている

――環境の変化に対応しながら仕事をしていくために、広告人は一体何をしていけば良いでしょうか。

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中川淳一郎氏
ライター、編集者、PRプランナー。1973年生まれ。東京都出身。一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。CC局で企業のPR業務に携わったのち、2001年退社。「日経エンタテインメント!」などのライターとして活動後、「テレビブロス」編集者。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などをしながら、06年からインターネット上のニュースサイトの編集者に。

中川 仕事相手と仲良くすることです。僕の今の仕事は8割ぐらいが酒の席で獲得したものですよ。しかも、そうして始まった仕事は長く続いています。仕事を頼む時、結局は相手のことをよく知っているかどうかが重要なんですよね。

笠松 クライアントとの相性も重要です。「何となくあいつのこと好き」って言われるくらいの方が強いんです。クライアントと飲みに行った時などに「なんで今回ウチを選んでくれたんですか」って聞くと「うーん、何となく」と言われることが結構多いですね。

伊藤 確かに人とのつながりが仕事に結びつくというのはたくさんあります。例えば私も、商品のサンプルを試してもらって感想を聞くケースなどは、自分が仲良くしているお友達のブロガーさんや美容ライターさんに頼みますね。

笠松 僕も得た仕事の多くは飲み会とか友達のつながりが多いかな。まともなルートよりそちらの方が多いかも知れないですね。

―― 一方で、「何か面白いことやろうよ」とか、「今度やろう」といった話はいわゆる社交辞令で、その後動かないことも結構ありますよね。

中川 やろうよって言って、いつ?って手帳出して、「俺この日空いてる」って決めちゃうんですよ。

伊藤 でも自分が決定権持っていないと、それはできないですよね。

――あの人を通さないとまずいかな、とか、いろいろ配慮しているとだめですよね。

笠松 会社員の時もそこまで周囲に配慮せず、割り切ってやっていましたね。当然怒られます。「お前、俺通さないで何やってんだ」とか。そこは「すいません」って謝るんです。怒られるけどやっちゃえっていう方が面白いと思います。仕事で人から殺されることはないと思うと、だいたい大丈夫ではないかと。

中川 せいぜい芸能事務所に軟禁されるくらいですよね(笑)。または頭剃って謝罪に行く。それぐらいですよ、広告の世界では。

「嫌われていい」と割り切ると自分を素直に出せる

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笠松良彦氏
イグナイト代表取締役/コミュニケーション・デザイナー。1964年生まれ。慶応義塾大学卒。日本電気、博報堂、電通を経て、2005年に電通とリクルートのジョイントベンチャーとして、メディア・シェイカーズを設立し、フリーマガジン『R25』事業を手掛ける。2010年には、トップマネジメント層が抱えるコミュニケーション領域における企業内外のあらゆる課題に対応するため株式会社イグナイトを設立。

――今は会社や労使関係は色んなことが規定されてきていますよね。その過程で失われてしまった何かがあるとすれば、面白いことをやるために何を変えていけばいいでしょうか。

中川 コンプライアンス無視です。

――そうですか?(笑)

中川 社員が実名でネットに書き込むことを禁止している会社もあるわけですよ。「いいじゃん」って思いますけどね。クレームが来ても「そんなのはうちの社員個人がやったことで会社とは関係ねえバカ!」って電話置けばいいんですよ。そうすると個人がガンガン好きな発言して面白くなる。だから個人が目立ちまくるというのは重要かなと思っているんです。

――コンプライアンス無視は会社員としてはなかなか難しいところがありますが、スタンスを決めればいいですかね。

中川 この人は頭がおかしい人だと思わせておけば、頭おかしい発言しても普通になる、ということだと思いますよ。

――聞いているだけでも波風立つ日々がいろいろと物事を動かしているんだなと実感します。人の気持ちを動かす仕事ですから、淡々とやっていたら何も変わりませんよね。

中川 極端な話、クライアントと付き合ったらいいと思うんですよ。そんな気持ちでいられれば、打ち合わせも超楽しくなるはずです。

笠松 僕はクライアントさんが一番大事だと思っているんです。僕は割と恋愛体質なんで、クライアントさんは男女関わらず、喋っていると好きになっちゃう。それで「この商品絶対売りましょうね」となるんです。自然と前のめりになるじゃないですか。もちろんユーザーのことも考えるんですけど、まず一旦クライアントを好きなるっていうのがいいかなと思いますね。

伊藤 私は基本的に「嫌われて当然だ」という思いでぶつかっていくスタンスでいます。大学1年生の時に初めてブログが炎上して、会ったこともない人から人格を否定されるようなことを言われました。傷ついた時期もあったけど、今は嫌われることに結構慣れてしまいました。嫌われてもいいやってなると自分を素直にさらけ出せるんですよね。そうすると自分の感性に合った人が集まってきてくれて、お仕事もうまくいったりします。

本一冊書けるぐらい語れる専門分野を持とう

――私たち広告人はこれからどんな力を高めていくと良い仕事ができるでしょうか。

中川 専門分野を持つことですね。あるライターに「僕はサブカルばっかりやってきて専門性がない。何がいい?」って聞かれて、部屋の間取りの専門家になれって言ったんですよ。そうしたら絶対仕事はあるよって。間取り評論家っていませんからね。

伊藤 私も専門性が大事だと思いますね。本一冊書けるぐらい語れる専門分野を持っておくと、あの人に頼もうって思ってもらえるので、今そういうのが各個人に必要だなと。

笠松 組織って粒を揃えたがるんです。でも粒が違う方が絶対楽しい業界なので、個性を出すということは大事です。砕けたことを言うと、僕が若い時に飲み会を仕切るというのは、すごく大事なOJTでした。男女がいて先輩や後輩がいて、恋とか色んな人間関係を考えて飲み会を楽しく仕切るっていうのはコミュニケーションを円滑にさせる究極の技術でもある。僕はいまだにやっていますが是非やった方が良いと思います。


講演終了後、「広告・コミュニケーションの未来——これからの60年」をテーマにコメントをいただきました。


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