コラム

アドタイ・デイズ 2013

【アドタイ・デイズ】(8)情報流通の変化とこれからの広告

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「広告界の未来を構想する」をテーマにしたイベント「AdverTimes DAYS(アドタイ・デイズ)2013」(主催・宣伝会議)が3月13日と14日、東京都千代田区の東京国際フォーラムで開かれ、2日間で9725人の方に来場いただきました。雑誌「宣伝会議」の創刊60周年(2014年4月)を控えた「宣伝会議60周年イヤー」の皮切りであり、本サイト発の初めてのイベントでもあります。2日間のセミナーの一部を本欄で紹介します。

情報量が爆発的に増え、またその伝播経路も複雑化し、企業のメッセージを消費者に届けるまでの道筋も見えにくくなった現代。そんな時代に企業がターゲットにメッセージを届けるためには、どんな発想、思考が必要なのか。

PRを絡めた統合的な広告・プロモーションのプランニングに携わる木原氏、プロデューサーという立場から従来の広告代理業の枠組みにとらわれない提案をする梅田氏、「NAVERまとめ」編集長として情報伝播の変化をつぶさに見ている桜川氏の3人が議論した。


<登壇者>
「NAVERまとめ」編集長 桜川和樹氏
博報堂 PR戦略局 ディレクター 木原龍太郎氏
大広 デジタルソリューション局 第1プロデュースセンター プロデューサー 梅田 亮氏

多面的で感情を揺さぶるコンテンツが、人を惹き付ける

──メディア、情報量が増え、情報伝播の流れにも変化が生じています。「NAVERまとめ」のようなサービスがこれだけの支持を得ているのも、そうした変化で生まれた新たなユーザーのニーズを捉えているからだと思います。「NAVERまとめ」編集長の桜川さんは、その変化をどう感じていますか。

sakuragawa

「NAVERまとめ」編集長 桜川和樹氏

桜川 正直、変化の流れが早すぎてついていけないところもあります。ソーシャルメディアが登場する前は、ある程度、マス媒体から同じ情報を得ていて、皆の中に共通文脈もあったと思うんです。それが、どんどん情報が断片化して伝播するように。ツイッターやフェイスブック経由で情報を得ることが増えていますから、隣の人と私とでは、知っている情報の領域が全く違ってくる。発信者側としては非常に情報が届けにくい時代になったと感じています。

梅田 同じクラスタだと会話が早いんだけど、通じない人だとどこから説明したら良いのか分からないってことは結構ありますよね。

──そうした難しい時代に、木原さんは戦略PRを基点にプランニングを考えているんですよね。

博報堂 PR戦略局 ディレクター 木原龍太郎氏

木原 広告的な発想って“言い当てる”文化だったと思うんです。一方でPRは“言い当てない”。商品に関する、色々な情報が出てきて、よく分からないんだけど、気になる存在にさせていくっていうのが重要です。訴求点を明確にした広告のような完成した情報を一方的に押し付けても、今の生活者は冷静なので、スルーされてしまう。逆に、なんだか分からないけど気になるものには、乗ってくれます。

梅田 今は人によって商品に興味を持つ入口が違いますよね。なので、どこからでも入ってこられるような多面体の商品の見せ方が大事かなと。

木原 それと、広告は良いとこだけを言おうとしますよね。商品化までに絶対に失敗談やトラブルがあったと思うんです。そういうことを色々な場で出していくって重要だなと思っていて。たとえば、ビールのPRで言えば、仮に「7割の人がおいしいと言いました」みたいな情報を出しても、みんなスルーしちゃうんですよ。逆に「3割の人が不味いと言いました」と発信すると、「え、なんで?」って、ざわっとなる。

桜川 同じ情報であっても、それをどう解釈するかで、面白くなるケースはたくさんありますよね。

木原 ソーシャルメディアの時代になって今感じることは、皆すごく本能的になっているということ。デジタルで理屈的になるのかなと思ったら、すごく本能的なことで動くんですよね。なので、喜怒哀楽をどう刺激するかが重要かなと。

梅田 ユーザーの感情から逃げてはいけないなって思いますね。デジタル世界の方が、むしろ人の本能があらわになる気も。生活者の日々の感情に真正面から向き合うのはすごく大事だし、逆にそこに入り込めば心を動かせるんじゃないかと。「共感して下さい」っていうアプローチではだめで、結果的に共感してくれて、企業のことを好きになってくれる、そういうことだと思います。

桜川 僕も、「NAVERまとめ」でタイアップ広告もやっているんですけど難しいですよね。感情を動かすって、かなり真剣勝負なところがあるので、少しでも気を抜くとコンテンツが面白くなくなってしまうというか、多面的にならないというか。

木原 変なことを言うかもしれないんですけど、これからのマーケティングの秘訣というか教科書ぐらいに思っているのがあって。昔、少年マガジンで連載されていた『BOYS BE…』っていう恋愛漫画。あれが参考になりますね。

梅田 それ、詳しく聞かせて欲しいですね(笑)。

木原 オムニバス形式の漫画で、色んな恋愛物語が出てくるんですよ。途中で互いがすれ違ったり、喧嘩したり、恋愛物語だけで色んなパターンがあって。たとえばそれを商品に置き換えれば、それだけのシナリオがあるんじゃないかと。それで、マーケティングの教科書だ! と思ってるんです。ドラマチックに商品と出会わせて、付き合うに至るまでケンカしたり、自分の弱さを見せたり…。多面的で、感情の起伏のあるストーリーになると思うんです。

梅田 物語を実際に企画に落として実現するのは大変じゃないですか?

木原 大変ですけど、「この施策ではこういう気持ちにさせましょう」という道筋が決まれば、そこに向かってアイデアが考えられる。そこを目指すのが重要だなと思います。

大広 デジタルソリューション局 第1プロデュースセンター プロデューサー 梅田 亮氏

梅田 認知とかももちろん大事だけど、要は「こう思ってもらいましょう」っていうゴールの感情を決めて、クライアントと共有して進めることが大事なんでしょうね。想いみたいなものを共有できていると、仕事ってやりやすくなりますから。

──最後に、クライアントにとって理想的なプランニングを実現するために、広告会社やメディア企業はどうあればよいと思いますか。

梅田 僕はプロデューサーという立場で仕事をしていますので、広告会社にいるたくさんのスペシャリストの力を結集し、クライアントと向き合っていけるような体制をつくっていければと思っています。

木原 広告会社の中にいると過去の事例や経験値で法則化していくのがうまくなるんです。向かう方向が内向きになってしまう。だから、時にまったく違う所から学んだほうがいいかなと。たとえば恋愛学や映画の物語の作り方とか。こういう物語やドラマを作ることに長けていけば、目標までのあらすじも見失わずにすむのでは。

桜川 広告会社の方から提案いただいて、「それはうちのメディアでないほうがうまくいく」と思って、お断りしてしまうこともあるんです。広告会社の方々には、もっとメディアの人たちと会ってほしいなと思います。メディア企業の人たちは、日々ユーザーと触れ合い、その気持ちの変化をつぶさに見ていますから。ある程度は、我々に委ねてもらったほうが良いと思う時もあって、そういうところは今後の課題かなと思います。


講演終了後、「広告・コミュニケーションの未来——これからの60年」をテーマにコメントをいただきました。


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