恒例となってまいりましたが、まずお題です。
【問】あなたは、自動販売機やコンビニ・スーパーで売られている、いわゆるソフトドリンクのお店(ネットショップ)の店長です。ただ商品を並べているだけだとつまらないので、お客さんに面白がってもらえるエイプリルフール企画をやろうと思いました。さて、どうしましょう?
※このお題には、もちろん正解があるわけではありませんが、「回答例」としての実践事例をご紹介します。
(考えタイム)
ちっ
ちっ
ちっ
ぼーん!
お題文に「いわゆるソフトドリンクのお店」と書きましたが、今回紹介するのは、本当に「いわゆるソフトドリンクのお店」という名前のお店です。
店長(社長)の中江稔浩(なかえとしひろ)さんの回答はこちら。「パロディ商品の商品ページをつくる」でした!
2002年から始まったこのパロディ企画、毎年恒例のものとなっています。2013年のパロディ商品は全部で19種類あって、私が一番ツボだったのは上の「だんみつ入り」です。そう、私は11年前からすっかりこの企画のファンなのです。同じような人がたくさんいて、「毎年エイプリルフールになるとこのお店を思い出す」「笑わせてくれると同時にお得な企画も実施していて何かしら買ってしまう」などと好評を博しています。
なお、過去の名作(迷作?)としては、「伊右衛門」のパロディで「伊茶門(いちゃもん)」、エビのマークが描かれたミネラルウォーター「Eviyan(エビやん)」、めちゃくちゃ高価なミネラルウォーター「Vottel(ボッテル)」などなど。そういえば、「ウコン茶」のパロディもありました……そう、いま頭に浮かんだやつでたぶん合っていると思います(笑)。
コンビニで売っているモノを、わざわざ自店舗で買ってもらうには?
この企画が面白いとはいうものの、最近はエイプリルフール企画に手間と情熱をかけるサイトが増えてきているので、「別に目新しい事例ではない」と思う方も少なくないことでしょう。
今回ご紹介したいポイントは、エイプリルフール企画そのものではありません。「自動販売機やコンビニで売っているモノを、わざわざ自店舗で買ってもらう理由をつくるには?」という視点で「いわゆるソフトドリンクのお店」がこれまでどんなことをやってきたか、です。
そもそも「いわゆるソフトドリンクのお店」の中江さんが楽天市場に出店したのは1999年7月。当時、周りからは「どこでも買える商品をネットで売るなんて」という批判的な声が多かったそうです。中江さん自身、「ネットで地元の特徴的な商品を販売しようとするお店が多いなかで『ソフトドリンクを売ります』と言うのがとても恥ずかしかった」といいます。
では、どうしたか。
初期の頃からやっていたのは、飲料メーカーから提供される非売品のノベルティをプレゼントやオークションに出すこと。これでまずはお店の存在を知ってもらうことを考え、実際にアクセス人数が増えていきました。
2001年には、オフィスにライブカメラを設置して24時間中継(更新は2分おき)をする「いわゆるTV」を実施。まだ「ネットショップで買い物をする不安」が大きかった時代に、「顔の見えるお店づくり」に取り組みます。こんなことをやっているネットショップなど、ほぼ皆無だった時代です。常連さんは面白がってちょくちょくページを見に来てくれたそうです。
これが面白企画にも発展していきます。たとえば、メルマガで「まちがい探しクイズ」や「ビンゴ大会」を開催してライブカメラで当選発表をするとか、商品ページ上にキーワードを隠した「宝探しゲーム」のヒントをライブカメラで伝える、などのイベントを開催、お客さんと盛り上がりました。
さらに、2002年には既出のエイプリルフール企画を開催。そのために中江さんは1ヵ月以上前からアイデアを練っていたそうです。今でも、スタッフ全員で1ヵ月前からアイデア出しをしています。
お客さんとのコミュニケーションも一方通行ではなく、「エイプリルフールパロディープロジェクトX(ペケ)」と題してネタを募集したり、3月末に決勝進出ネタを決める投票イベントをやったりして交流を深めているといいます。
あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか
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