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コラム

CSR視点で広報を考える

STAP細胞論文問題から始まる新たなコンプライアンス危機

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製薬業界に広がる波紋

学術や研究の分野でのコンプライアンス問題が広がりつつある。理研問題がやっと落ち着いてきた頃、今度は製薬業界で事件が発覚した。

製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンに関する臨床研究の論文にデータ不正があった事件で、東京地検特捜部は6月11日、京都府立医大の論文データを不正に操作したとして、同社元社員を薬事法違反(誇大広告など)の疑いで逮捕し、発表した。

この問題では、厚生労働省が今年1月、ノバルティス日本法人に対する同法違反容疑での告発状を東京地検に提出。特捜部は2月に、同社や京都府立医大などを家宅捜索していたことが確認されている。特捜部は、組織的な関与がなかったかどうかを含めて現在も捜査中で、進展が注視されている。

また、製薬最大手の武田薬品工業も6月20日、京都大などによる高血圧治療薬の臨床研究で、同社の薬ブロプレスの付加価値を高めるために、組織的に不適切な関与をしていたと発表した。

同社は、3月の記者会見では社員の関与を一切認めていなかったが、同社が依頼した第三者機関は、企画段階から学会発表まで一貫して関与があったと調査報告書で結論づけ、修正の記者会見を行ったものである。

コンプライアンス体制の御用組合化で機能不全に

昨今の不祥事では、リスク管理や監査、コンプライアンス部門が経営側と密着・御用組合化して、適正な調査能力が発揮できない事態が散見される。全ての事例に必要とは言わないが、自浄作用が失われた企業風土の中では、第三者委員会が救世主となる事例も増えつつある。

経営側が正しい選択肢であると経営判断を行うビジネスジャッジメントルールは、適正かつ合理的なものさしによって判断が行われる場合に大きな力を発揮するが、そのものさしが狂う場合、すなわち判断が難しい事例では、第三者委員会の設置はひとつの有益な経営側の担保となるだろう。

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