大幅な権限委譲とプロセス評価で力を引き出す
——三つの力を伸ばすために、会社として行っていることなどありますか?
私が社長に就任して、まず大げさなくらい権限委譲しました。例えば部長クラスでも他社では考えられないくらい、金額、原価率、人事権など委譲しています。ひょっとすると、その重さに耐え切れなくて疲れている人も出ているかもしれませんね。言うならば「自由と自己責任のマネジメント」です。それでも、半年くらい経過しましたが、みな地に足が付いてきたというか、自身の責任で決断する機会が増えたので、持っている力を大いに発揮し始めています。権限委譲によって、責任感、自立が促されてきているように感じます。
ビジネスの基本として、よく「ホウ・レン・ソウ」と言われますが、私が考える重要な順番は全く逆で「ソウ・レン・ホウ」です。つまり、「気軽な相談、こまめな連絡、時々報告」という感じです。なぜなら、気軽に相談できる雰囲気があるから、こまめに連絡してくるわけです。そうしてコミュニケーションを密にしていれば、大体状況は分かりますから、報告はたまにでもかまわないのです。
もう一つは、プロセス評価に重きを置くこと。やはりプロセスが正しければ結果はおのずと出ると思っています。だから、例え結果がついてこなくても、最後の最後まであきらめてはいけない。苦しい状況であっても、何か全力でやらなきゃいけないことがあるはずだから、考えて行動しようと伝えています。
——先ほどの「計数能力」については、何か行っていることはあるのでしょうか?
何も難しいことをしているわけではありません。単純に、このプロジェクトだと利益率は最低これくらいとならないと、給与分になりませんよ、ということが分かっていればいいのです。経済合理性というと一見難しく聞こえますが、自身の生活に当てはめて考えれば、収入以上に使っていては生活が破たんするのは当たり前のこと。だから、資金繰り、損益分岐点、利益率。この三つについてプロジェクトを進めながら学んでいます。
多様性をイノベーション創出に変えるためのチームづくりに注力
—— 一方で、社員にもっと自主的に取り組んでほしいこと、自身で力を伸ばしてほしいことはありますか?
もう少しチャレンジをして欲しいですね。先ほどプロセスを重視して結果は問わないと話しましたが、当社では「最終的な数値責任はすべて私が取る」と宣言しています。だから、恐れずに挑戦してほしい。まずは「とりあえずやってみようかな?」くらいの感覚でいいので、たくさん挑戦してほしいですね。
——挑戦しやすいような仕組み、例えば社内アイデアコンテストなどあったりするのでしょうか?
いまはそうしたことは行っていません。代わりに、小さなチームをたくさん作ってコミュニケーションを密にするようにしています。それは「多様性からイノベーションが生まれる」と思っているからです。これは、一歩間違えるとセクショナリズムや批判を生むことにもつながります。だから、「多様性を批判に変えるのか、イノベーションに変えるのか」というのが、最大の関心事です。当然ながら、いろいろな人がいるので良いことも悪いことも、様々です。それをどうイノベーションに変えていくのか。そこは私の責任ですし、力が試されていると思っています。
「企業トップが語る“次世代リーダー”の育て方」バックナンバー
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