アイデアだけでなく、その周辺に求められることも想像できるか
——そういったマインドを生み出すための土壌作りとしてやっていることはありますか?
社内アイデアコンテストなどの制度にだけ頼ることはしていません。というのも、イベント形式にすると、申請や資料作成などでコストがかかり過ぎてしまうからです。提案者側も大変だし、審査側も大変。それに、「たまたまタイミング良く、期間中にアイデアを持っていた人」しか提出できない仕組みです。
そこで、制度にこだわらず、その時々に合う「ひらめきを受け入れるための仕組み」が必要だと思います。一番理想的なのは、新しい試みを聞いてあげられる上司を育てること、もしくは言い出しやすい環境にすることですね。何か特別な制度を作るよりも、そういった社内風土の醸成の方が重要だと思います。実際の現場ではアイデアがつぶされてしまうこともあるかもしれませんが、本当にやりたいことであれば、多少のハードルは越えてくると思っています。
——「アイデアを通す力」というのも大切になるということでしょうか?
そうですね。やはり、新しいアイデアを通すには説得力が必要です。ひらめいたサービスや商品について、「社会・場所・人を含めてトータルで想像できているかどうか」は必ず考えなければいけない。「こんな斬新なアイデアなのだからきっと売れるはず」など単純な話ではなく「社会がどうなっていて、こういう人たちにニーズがあるから、こんな風に使うとより利便性が高まる」といったように、より大きな視点からそのアイデアを見ているかどうか。
技術的なことも大切ですが、今の世の中で成功しているパターンってそれだけではありません。例えば、iPhoneだって、もっと前に同じような機能を搭載したものが作られていました。それでもiPhoneがヒットしたのは、時代や環境や売り方といった「商品以外の要素」があったから。だから、そうした“アイデアの周辺にあるもの”もちゃんと想像してほしいと思っています。
想像していることは、自分の妄想でもよいと思っています。実際にそうなるかどうかではなく、きちんとプロセスを想像できているかどうか。商品・サービスの斬新さだけをアピールするのではなく、「これからはこういう世界になるはず。だから、こういった商品が必要なのです」という世界観まで想像してほしい。自分の仕事の範囲をもっと拡張してとらえ、浮かんだアイデアの周辺にも広く考えを巡らせることで、もっと成長できるはずです。
「企業トップが語る“次世代リーダー”の育て方」バックナンバー
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