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コラム

企業トップが語る“次世代リーダー”の育て方

「育成ではなく、機会をとらえて自ら成長できるか」——ドゥ・ハウス 稲垣社長に聞く

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グチなら誰にでも言える。「ほめる力」を身に付けること

——社員に向けて具体的に示している方向性はありますか?

社員向けには「捨てる勇気」と「聞く力」。この2つをキーワードにしています。まず、「捨てる勇気」の意味ですが、見栄のようなものって誰にでもありますよね。プライドとバイタリティは同じ器に入ってるんです。だからプライドをいっぱい詰め込んじゃうとバイタリティが入らない。なので、「プライドは捨てよう」という話をしています。当社では年に1回「イノベーション大賞」ということを行って社員表彰をしていますが、これは「今期、古い○○をこうやって捨てた」ということを表彰する仕組みなんです。

——「捨てた」という行動にフォーカスしているんですね。

ちょっと気を許すと「新しい」が表彰されますけど、本来はそうじゃなくて、捨てた方に価値があるんです。「捨てる」ことこそがイノベーションの本質です。自ら捨てるイノベーションが停滞すると、外部の力によって、リボルーションされてしまうのです。

——貴社の事業としては、「クチコミ」と「定性リサーチ」が軸になっていると思います。ここにおける先ほどの「2つの力」はどう生きているのでしょうか?

その中でも定性リサーチにはいろんな動きがあって、根幹には「消費者の意見」というものがあるんです。当社はDOさん(生活現場で活動する主婦。ドゥ・ハウスが擁している既婚女性ネットワークのこと)というマーケターとともにやっているのですが、彼女らの力は「聞く力」と「ほめる力」なんですね。大げさかもしれませんが、この力のおかげで単なるモニター調査の100倍の事実を集められます。とにかく「人の100倍の事実を見つめる技術」。これを身につけようというのが、社員や事業を含めての根っこになっています。

——「ほめる力」についてもう少し詳しく聞かせてください。

これは言葉を変えると「観察力」なんですね。世の中にほめ上手な人っているでしょう? そういう人はいろんな角度から人物なり商品なりを見ています。豊かな観察力があって初めて「君の○○ってすごいね」とほめられるわけです。これは当社のマーケティング提案の根幹をなす考え方なので、これだけをベースに年2回ほど全社員を対象に合宿をやっています。それもセミナーとか技術研修でなくて、とにかく野や山に出る。体験する。そんな合宿をやっています。今は懐かしい川喜田二郎さんの提唱した「野外科学」の実践です。かっこよくいうと「フィールドサイエンス」です。マーケティングの基本ですね。

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