コピーライターを目指そうとしている人なら、誰でも「自分の文章で多くの人に感動を与えたい…」と思うことでしょう。駆け出しの頃の僕もそうでした。読む人の心を揺さぶるような、何かいい話を仕立て上げたいと意気込んで、気の利いたレトリックを探すことに夢中でした。「何」を書くかというより、「どう」書いてやろうかと悩むうちに時間ばかり過ぎていくのです。思えば、そんな時の思考回路はつねに「である調」モードだった気がします。〜だ、〜である、の文体は、書く側にとって自身の想いを言い切った感じで気持ちがよく、読む側には力強く立派なことが書かれているように映ります。「生活」より「人生」といった重い単語を選ぶようになり、文章がどんどん「抽象的」になる傾向があります。自分の書く文章に自分が酔っていく。これが僕の「イメージで書いている」状態だったわけですね。それがさらに高じると「ポエジー」モードへと進むのです。
今回の受講生の皆さんの場合も、課題を前に「さあ、コピーを書くゾ!」と気負うあまりに、通販コピーとイメージコピーの別を意識する前に、つい、自分の「作品」を書き始めてしまった人が多かったんだと思います。
通販における商品コピーは、一言で言えば「店員さんのおしゃべり」のようなものです。商品の前で立ち止まったお客さんに、いきなり「人生は、長い旅に似ている。」などと話しかけたら相手は引いてしまうでしょう。それでも店員が目を瞑って、気持ちよさそうに自作の詩を朗読し続けたら…お客さんは逃げて行きますよね。
直販コピーも同じです。背伸びをせずに、身近でわかりやすい言葉やフレーズを重ねていけばいいのです。喫茶店で友人とお喋りしているような「自然体」でいいのです。広告コピーだからと意識過剰になって、変なモードスイッチを入れてしまうことが一番よくない。「である調」は、そのスイッチに手をかけるきっかけになってしまうことがあるのです。
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