貴社のブランドが、今春“永久に使えなくなる”かもしれない。インターネット上の「住所」であり企業の「顔」でもあるドメインに、企業名やブランド名そのものをドメイン末尾に使うことができる「ブランドTLD(トップレベルドメイン)」の申請受付が今春スタートした。2012年以来、14年ぶりの受付となる。
「ファーストラウンド」と呼ばれる前回はトヨタ自動車やシャープ、ソフトバンクグループなどが申請し、日本企業から46のブランドTLDが登録されている。導入支援で圧倒的なシェアを持ち、自らもブランドTLDを取得したGMOインターネットグループのGMOブランドセキュリティによると、大手企業を中心にすでに多くの案件が進んでおり、新規の相談も相次いでいるという。同社はブランドTLDの特性や導入メリットを伝えるにあたって「.貴社名(ドットきしゃめい)」という愛称を用いている。
AI技術の急速な進展により、なりすましなどの脅威が深刻化し、ネット上のセキュリティ確保やブランド保護の重要性はかつてないほど高まっている。これに伴い、ブランドTLDの導入意義も変容し、そのニーズは多様化している。現在は信頼性向上に留まらず、国内外の関連会社を含めたドメインガバナンスの強化を主眼に導入する企業も登場している。申請受付期間は4月30日から8月12日までの約3カ月と待ったなし。いま企業が導入すべき理由と活用法について、GMOブランドセキュリティの網野圭亮氏と寺地裕樹氏に聞いた。
ネット上に「自社ビル」を持てるチャンス
ブランドTLDとは、インターネットのドメインネームを管理する国際機関のICANNが認可する、特定企業専用のTLD(トップレベルドメイン)のこと。2012年のファーストラウンドは、世界中から約1900件、日本からはトヨタ自動車、シャープなど国内有数のグローバル企業を中心に約50件の申請があった。
従来のドメイン(.comや.jpなど)との決定的な違いは、「構造的な安全性」にある。網野氏は「従来のドメイン活用は、雑居ビルの一室を借りているような状態です。ブランドTLDはそれに対し、自社ビルを一棟占有しているイメージに近い」と説明する。
GMOブランドセキュリティ ブランドセキュリティ事業本部 本部長 網野圭亮 氏
「.comや.jpは、誰でもドメインを取得できるがゆえに、例えばGMOなら『grno.com』や『gm0.com』など紛らわしい文字列のドメインを使った悪意のある『なりすましサイト』が作れてしまうリスクを孕んでいます。また、キャンペーンの時だけ使用し、終わったら放棄してしまうドメインや、保護目的で保有していたドメインの更新を失念した隙に第三者に取得されてしまう『ドロップキャッチ』のリスク、また国内外の関係会社が独自にドメインを取得して統制が効かなくなる『野良ドメイン』の問題も抱えています」(網野氏)
ブランドTLDは、ビル一棟を丸ごと占有するイメージ
一方、ブランドTLDは、その企業だけが自社ブランド名を冠したドメインの発行権を持っている。そのため、第三者が自社ブランド名を冠したドメインを取得することは不可能で、ブランディングを念頭に置いた「入居管理」やセキュリティ基準を自社で完全にコントロールすることが可能になる。これにより、偽サイトが紛れ込む余地が構造的に排除され、自社グループのデジタル資産を一つの強固な「ネット上の自社ビル」の中に築くことができる。例えばトヨタ自動車であれば、メインサイトを「global.toyota」、サービスサイトを「biz.toyota」とし、積極的にブランドTLDを活用。さらに、ブランド名で「.lexus」も取得しブランディングへ活かしている。
ファーストラウンドの募集時と決定的に異なるのは、インターネットを取り巻く環境と「利用形態」の変化だ。
「2012年当時は情報を検索エンジンで探すのが主流でしたが、今はAIに聞く時代です。AIが情報を収集する際、どの情報が正しいかを判断する材料として、ドメインの信頼性は極めて重要になります。ICANNの厳しい審査を経たブランドTLDを使用したサイトは、AIにとっても人間にとっても『絶対に本物の情報である一次情報源』という信頼性を担保するための最強のインフラになるのです」(網野氏)
ブランドの統一感や安心感の醸成に貢献
ブランドTLDの導入は、ブランディング戦略としても有効だ。特に、マルチブランドや多数のサービスを展開する企業にとって、ブランドTLDは「信頼の旗印」となる。
ブランドTLDを持つ理由はさまざま
ブランドの統一感と信頼を醸成したのが、シャープの例だ。同社は「.sharp」を取得し、そのすぐ左の第2レベルは国別に国名を冠し、日本は「jp.sharp」、ベトナムは「vn.sharp」としている。コーポレートサイトや製品サイトは、第3レベルに会社名や製品名を配置して、「○○(会社名や製品名).jp.sharp」と表記している。このルールによって、ドメインを見ただけでどの国の何のサイトかを判別することができ、さらには国内外の関連会社のドメイン利用にガバナンスを効かせることができる。
「独自ドメインを個別に取得するよりも、ブランドTLDに集約する方が、ブランドの統一感と信頼の醸成スピードを早めることができます」と寺地氏は話す。
また、製品や技術が「自社のものであること」を瞬時に周知する手段としてもブランドTLDは有効だ。リコーは「image-pointer.ricoh」というドメインで、「イメージポインターはリコーが提供している製品」であることの周知を行っている。「.com」や「.jp」のドメインの場合、「イメージポインター」という普通名詞の組み合せでは、第三者にドメインを取得されているケースもあるが、「.ricoh」では確実に自社で望む文字列のドメインが発行できる。
GMOブランドセキュリティ 営業・マーケティング事業本部 本部長 寺地裕樹 氏
さらに、顧客との直接的な接点であるメールにおけるブランドTLDの活用も注目されている。例えば東芝グループでは、メールアドレスに「@mail.toshiba」を採用。受信者が直感的に「公式からの連絡」であると判別できるため、顧客に安心感を与え、結果としてメールの信頼性や開封率の向上にもつなげている。
一方で、導入を検討する企業からは懸念点も挙げられる。代表的なものが、ドメイン移行に伴う検索順位(SEO)への影響だ。しかし、適切な対策を講じれば、短期間で以前と同等以上のパフォーマンスになるため、「長期的なブランド価値の向上を見据えれば、戦略的にドメインを統合していくメリットの方が遥かに大きい」と寺地氏は強調する。
また、取得後の運用において、現在のドメインとの棲み分けをどうすべきかという点も議論となるが、ブランドTLDを運用している企業の多くは、既存ドメインも併用する「ハイブリッド型」を選択。今あるデジタル資産を活かしながら、中長期的な視点で再構築することが活用のポイントとなる。
企業によって活用法もさまざま。「とりあえず取得しておく」というケースも少なくない
GMOブランドセキュリティだからこそ語れる「有効活用法」
ブランドTLDの導入にはどのような手順を踏むのか。直接的なコストとしては、ICANNへの申請費用を含む約4000万円、ランニングコストとして年間約800万円が必要となる。申請から審査を経て使用開始するまでには1年〜1年半を要し、今回のセカンドラウンドでは最短で2027年末頃から使用できると見込まれている。このプロセスを伴走支援するのが、「GMO『.貴社名(ドットきしゃめい)』申請・運用支援サービス」だ。
同サービスの強みは、申請書の作成支援からICANNとの調整、申請後の運用サポートまでを一貫して提供できること。米国に常駐する専門メンバーもいるため、現地での迅速な対応も可能だ。また、審査期間中は、ブランドTLDの具体的な活用ルールの策定や、既存サイトからのスムーズな移行戦略をともに考え、約1年間にわたるフォローアップ体制で支えている。
さらに、同サービスを提供するGMOブランドセキュリティ社ならではの特徴が「自らもブランドTLDのユーザーである」ことだ。GMOインターネットグループ全体で「.gmo」を広く導入し、使う側のノウハウやメリットを知り尽くした上で、サービスを提供している。前回の申請受付時には日本企業の8割以上がGMOインターネットグループを通じて取得していることから、膨大な事例も知見も蓄えている。
「単にドメインを取るだけでなく、『ブランドTLDを取得することでどんな世界観が描けるか』まで踏み込んで議論させていただいています」(網野氏)
文字列の取得は早い者勝ち、次回受付は「未定」
今回のセカンドラウンドにおけるICANNへの申請締め切りは8月12日。GMOブランドセキュリティは、準備期間を踏まえて可能な限り早期の「GMO『.貴社名(ドットきしゃめい)』申請・運用支援サービス」申込を推奨している。
ブランドTLDを検討する上で留意すべきなのは、取得の機会が限定的であり、企業の意図するタイミングで申請できるとは限らないという点だ。今回の募集を逃すと、次の申請チャンスがいつ訪れるのか分からない。
さらに、ブランドTLDの申請文字列は原則として「早い者勝ち」というルールがあるため、ブランドのアイデンティティそのものを先取りされるリスクも看過できない。「特に3文字程度の企業名やブランド名に、普通名詞や一般的な苗字などの文字列は重複しやすく、世界中から寄せられる他社の申請とバッティングする可能性が大いにあります。そこで先を越されてしまえば、自社のブランド名を冠したトップレベルドメインを、今後永遠に使えないという事態になりかねません」(網野氏)
ブランドTLDの取得は、単なるセキュリティ対策の側面にとどまらず、企業の経営戦略の根幹を支える重要課題である。なりすましを防ぐセキュリティ、グループを統制するガバナンス、そして顧客の信頼を獲得するマーケティング。今回の第2ラウンドは、企業ブランドの信頼を10年、20年先へとつなぐためのチャンスといえるだろう。
お問い合わせ
GMOブランドセキュリティ株式会社
企業サイト:https://brandsecurity.gmo/
「GMO『.貴社名(ドットきしゃめい)』申請・運用支援サービス」
E-mail:mrk@brandsecurity.gmo





