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コラム

良いコピーをどうやって書くか、ということより先に知っておかないといけない話。

俺は…“一人の軍隊”だ。

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大手広告会社の若手コピーライターが講演とかやると、「こんな戦いやりました、こんな戦いもやりました、コピーライティングは僕に言わせれば、やっぱりパッションですね」とか、そんなことになります。
それを鵜呑みにして「一人の軍隊」が「そうか突撃あるのみか」と、ワーッとクライアントに突っ込んだら瞬殺です。

かく言う僕も、人様に何か教えられるかなと思い始めたのはここ数年ぐらい。
若い頃、講演とかセミナーとか頼まれることありましたけど、たいしたことはほとんどしゃべれなかった。
「んー、コピーライティングにとって必要なのは、日常の好奇心?発見しようって姿勢というかアティチュード、みたいな?」
みたいな。

ゴルゴライターが軍隊ライターの戦い方を見習っても、うまくはいかないと思います。
僕の本にはこれまでコピーライターが書かなかったことが書いてある、といろんな方から褒めていただくのですが、それはそうです、なぜなら、「調べることが大事」とか「聴くことが大事」とか書いてあるけど、軍隊ライターはそんなこと意識しなくても、市場環境はマーケが調べるしクライアントのインサイトは営業さんが教えてくれるのだから。
意識しないことは書けません。
でもゴルゴライターはそういったことから自分でやらないといけないんです。

チームにはチームの戦い方が、一人には一人の戦い方があるのです。
若手コピーライターには、そこをしっかり知った上で、クライアントに立ち向かっていってほしいと思います。

コピー年鑑の新人賞も、軍隊ライターの場合ほとんどはチームに書かせてもらったようなものだと思いますよ。
だから「なんで俺は新人賞引っかからないんだー」と嘆く人たくさんいますけど、そういうのを見て焦る必要は全くないし、自分の力が劣っていると感じる必要もない。
そんなん獲れなくても、一人でクライアント相手にいい戦いを展開してる、そんなコピーライターを僕はリスペクトします。

ところで今回、僕が戦争を喩えにしているのは、最近ブラピの戦車映画を観てきた影響もあると思いますが、マーケティングは軍事戦略から生まれた側面もあるので、比喩としてわかりやすいんですよね。
マーケティング用語のキャンペーンはそもそも軍事行動という意味ですし、ストラテジーは戦略、ターゲットはそのままターゲット。
日本と違い、海外では軍隊で参謀やってた人が民間にマーケターとして転職することが多かったようで、軍事の知見が持ち込まれてきたわけです。
広告と軍事は相性がいいのです。

古代の兵法家・孫子はまるで現代の広告業界を見通していたかのような知略を授けてくれます。
広告業界人は「孫子の兵法」を一度読んでおいて損はないでしょう。
少しだけ現代語訳付きで紹介してみます。


百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。

(競合に勝つより、競合にしない営業さんが優秀だよね)


彼を知り己を知れば、百戦殆うからず。

(プレゼン前はクライアントの部長と飲みに行っとけ)


兵に常勢無く、常形無し。能く敵に因りて変化して勝を取る者、之を神と謂う。

(突然役員にひっくり返されても慌てず対処できるチームが神)

次回は宣伝会議さんから有料セミナーにからめたものを、と頼まれているのですけど、有意義な内容になるかどうか。ならなければ違う話にします。

小霜和也(小霜オフィス/no problem LLC. 代表)
Creative Consulting / Direction / Copywriting
1962 年兵庫県西宮市生まれ。1986 年東京大学法学部卒業。
同年博報堂入社、コピーライター配属。1998 年退社。
2014年現在、株式会社小霜オフィス no problem LLC. 代表。

著書に『ここらで広告コピーの本当の話をします。』(宣伝会議刊)

『コピーライター養成講座 専門コース 小霜和也クラス 12月20日(土)開講』
講義は 【オリエン篇】、【打ち合わせ篇】、【プレゼン篇】 の3回構成
講師はクリエイティブディレクター、営業、クライアントの3名が登壇。ちょっとした「演劇」を行います。

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