【前回のコラム】「iPS細胞を初めて実用化した髙橋政代がコピーライターに依頼したこと。」はこちら
小霜:僕、あんまり映画館に行かないんですよ。観ようかなとグズグズしてるうちにDVDが出ちゃう。でも『この世界の片隅に』(以下、このセカ)がウェブで熱狂的に支持されていて、気になっていた。それで観に行ってみたら、もう冒頭のシーンでほろっときた。原作コミックを読んだらさらにじわじわきて、その後1週間くらい仕事が手につかなくなったんです。
それで『このセカ』について誰かと語りたい!と思って知り合いのMakuake社員を飲みに連れ出したら、そこに代表の中山さんも参加されて。その場で、「小霜さんの本をMakuake社員全員、必須で読むことにしているんですよ」って話をしてくれました。それが今この場につながっています。
中山:先日初めてお会いしたのですが、小霜さんの本を読んでいたので、心の師匠に会えた!みたいな感じでした(笑)。
Makuakeを立ち上げた頃、日本でのクラウドファンディングに、“何か心をワクワクさせる企画が少ないなと感じていたんです!”新しい何かが生まれるワクワク感をもらえることが、楽しい顧客体験になる場にしたいなと思っていました。
そんな中、どうやったら心をワクワクさせて気持ちよくお金を出したいと思ってもらえるのかと考えていたところ、それはクリエイティブディレクターの仕事かもしれないと思いつきまして、広告の本を探していたんです。そこで手にしたのが小霜さんの本でした。
失礼ながら広告を不勉強だったため、小霜さんのことをその本で始めて知る事になったのですが、息を吸うかのようにすべての答えが頭に入ってきて、モヤモヤしていたものが全部言葉化されていったというか。「掲載されているアイデア」と「お金を出してくれるターゲット」との関係構築、体験構築を定義する、コピーライティングと同じような作業が必要なんだと言うことに気付きました。
小霜:それは想定外(笑)。書いている時には意識してなかったことです。
僕ね、マーケティングとクラウドファンディングの関係がまだちょっとわかっていなくて、そのあたりを教えていただけますか。
中山:完成した製品が欲しいからお金を払うのか、欲しい製品を作ってもらいたいからお金を払うのか。お金を払うタイミングが違うだけで、まったく同じことだと思っています。Makuakeに掲載されるアイデアは、支援者の心を強烈に揺らして「それ買うからぜひ作って欲しい!」といかに思ってもらうかが大事なんです。お金を払うタイミングは違いますが、「心の揺らぎ」を生み出したり、「相手にとっての価値をつくる」といった役割は広告コピーとそれほど変わらないと思います。
小霜:なるほど。
中山: お客さんが欲しいと思うものをただ掲載するだけでは、そう思ってもらえないことが多いので、伝え方は重要だなと思います。小霜さんの本にもありますが、「優位性はなんだろう。その優位性を伝えた時にどういう価値体験が想起されるのだろう。」をワンセットで考えていくことで初めて良さが伝わるので、クラウドファンディングで支援してもらうことも、出来上がった製品を広告していくこともあまり変わらないのかなと思っています。違いがあるとしたら、買う人たちが関わる「余白」があるかどうかですね。
小霜:「余白」ですか。
中山: 『このセカ』の場合、制作資金が足りないことが「余白」です。Give&Takeでいうと、Giveした人、つまり支援した人のほうがより熱い思いを持つため、支援することで余白を埋めたファンはより熱いファンになっていくわけです。熱いファンがいれば、そこを中心にマーケティングを展開しやすいですから。その余白を作るのがMakuake、クラウドファンディングの面白いところだと思います。
小霜:クラウドファンディングと投資はちょっと違いますよね。
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