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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

ローカルテレビ局はどう生き残るのか?地元に密着する岡山放送に新しいカタチを見た

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“地域密着”のひとつの解答

それにしても、巨大ショッピングセンターの中に放送局が移転したこと、その館内放送を共同運営すること、そこにはどんな意義があるのでしょうか。

岡山放送の方にお話をうかがって、大きな要素としてわかったのは、営業上の利点です。さっきの吹き抜けの空間は、そこに面した各階から大勢の人が見ることができ、一種の劇場のような使い方もできます。

実際にファッションショーを開催したこともあり、大いに盛り上がったそうです。イオンという日本の流通の雄と、放送局が一緒になっていることで、相乗効果がありそうです。新しい商品を売る、という時に、岡山商圏ではイオン岡山が重要だなあ、イベントもやろうか、岡山放送でスポットCMも打とう。だったら一緒にこんなことやあんなことを・・・などと組合せた仕掛けがいろいろできるんじゃないでしょうか。

CMと、リアルな場、というセットはプロモーションする上で大きな効果を生みそう。それに岡山という商圏の規模にとって、イオンモールの大きさはちょうどよい効果をもたらす気がします。さらに、岡山は全国でも珍しく、県をまたがった放送エリアで、香川県にも同じ番組が放送される「相互乗り入れ」の放送圏なのです。岡山でのプロモーションは、中国地方、四国地方、両方への影響を及ぼす可能性があります。

こうしたセールス上の効果とは別に私が強く感じたのは、県民にとって身近な局になっていくのではないか、という点です。放送局が地域密着という場合、それはほぼ、地元経済界との関係づくりを意味するのではないでしょうか。でもイオンのフロアで放送される様子から感じとれたのは、県民と直接つながった放送局の姿でした。ローカル局が地域密着という時、大事にしなければならないのは、経済界の前に一人ひとりの県民のはずです。人びとが集まるショッピングモールの中から毎日、番組を放送することは、これまで考えなかった“地域密着”のひとつの解答なのだと思います。

ローカル局は各局の設立経緯やネットワーク系列の決定(そして組替え)などの過程で、個々の地域の事情や中央との関係が、政治的な部分も含めて色濃く反映されています。そのほとんどは90年代までに完成したものです。いま、メディアマップが新たな方向へ向かって塗りかえられようとするなか、ローカル局の立ち位置も新たに組立て直す時がやって来そうです。いままではネットワークに寄り掛かる方が経営効率もよかったのだと思いますが、これからはいかに自身で情報発信力を高められるかが必要になるはず。そんななか、岡山放送は県民との新たな絆づくりに向けた試みを始めたのだと言えるでしょう。商業施設との提携はひとつの答えにすぎませんが、ネット配信の使い方も含めて大きなヒントとなりそうです。

手放しで喜ぶことだらけではないでしょうし、デメリットだって多々出てくるかもしれません。けれども、そのチャレンジする姿勢は素晴らしいなと思います。岡山放送の、そして全国のローカル局の今後には、注目していきたいと思います。もし他にもユニークな取り組みなどあったら、ぜひ教えてください!