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コラム

「ヴィレッジヴァンガードに学ぶお店づくり~こんなんだってあり~」

ヴィレヴァンの「POP」であやつるMD戦略~お客さまのお買いものスイッチを狂わせる

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【前回コラム】「ヴィレヴァンの「ごちゃまぜ」陳列論~店舗は三次元の雑誌のように」はこちら

今回はヴィレヴァンのPOPライティングについて少々。
ヴィレヴァンでは、店内にある商品に、黄色いPOPカードをとにかく貼りまくります。
人によって差はあると思うのですが、自分が書いたPOPは、数えたわけじゃないけど、おそらく10万枚くらい。その内容もまた通常の小売店で目にするようなPOPとは一線を画します。
なぜそこまでPOPを店内に貼りまくるのか、そしてなぜ内容が通常の小売店とは違うのか。そのあたりを体験談とともに少しだけ解き明かしていきたいと思います。
今回も個人的見解が少なからず含まれることはどうぞご了承ください。

未知との遭遇 感動のクライマックス

私が雑貨の仕入れ担当をしていたときのことだ。

「なんか、おもしろいもんないかな。どうでもいい感じのやつ~」
と心の中でつぶやきながら仕入れカタログをパラパラ~。

「ねえなあ、ねえなあ、んっ、なにこれ」。
「未確認飛行物体ラジコン?」。

カタログに載っていたのは、「ザ・低予算」な発泡スチロールで出来たラジコンに、SFを思わせるような未来感がハンパないド派手パッケージ。パッケージで猛烈アピールしているけど、中身が思いっきり見えちゃっていて、非常に残念な感じ。

「こ、こ、これや。わいが求めていたのはこれや」と心が口を動かした。

すぐに注文をするために取引先に電話。

「これ、やばいですね」
「いいでしょ、意外にちゃんと飛びますよ」
「ラジコンなのにちゃんと飛ぶって営業トークってすごいですね」

こんなやりとりをなんやかんやしながら、まとまった数をオーダーすることになり、在庫が余っていたのか知らないが、次の日には、注文した大量のUFO君たちが、納品という形で、群をなしてお店に襲来した。

「うわ~、これいいわぁ。めっちゃ発泡スチロール」。

未確認飛行物体のUFO君たちを存分に確認したあと、ワクワクしながら、サンプルのラジコンに電池を入れて飛ばしてみた。

「うわっ、飛んだ」

コントローラーを動かせば、上下左右に自由自在だ。これはスゲーと思った瞬間、斜めになって、他の売場につっこんだ。見た目の割になかなかの攻撃力で、平和なはずだった他の売場は、甚大な被害をこうむった。

「これはいかん。うまく操縦しないと、こいつ、他の売場を攻撃する」。

「どうしよう、これ。サンプルないとこの感動つたわらないし」。

そこで至った答えが、レジにコントローラーを置いておき、お客さまが売場に近づいてきたら、こっそり動かして、びびらせるというやり方だ。
これは案の定、最初は楽しかったのだが、3回くらいやった時点で我に返り「これ無理だ、俺の仕事が滞る」とあきらめた。

でも、動きを見せたい。どうしよう??
「そうだ、パラパラ漫画でいいや」。

大量のPOP用紙を持ってきて、UFOをすごい数、描き続け、途中で楽しくなってきて、余計なストーリーもいっぱい加えて、シュールすぎるパラパラ漫画を描きあげた。
それを天井から無造作にぶら下げたのだが、お客さまは、謎の黄色い用紙の束が、天井からぶらぶらしているので、だいたい、気になって手に取ってくださり、くだらなすぎる仕掛けに失笑してくれていた。

おかげさまでUFOは順調にお客さまの家に飛び立っていき、最後の1個になったとき、「このパラパラ漫画もください!」とお客さまに言われ、スペシャル特典として最後にプレゼントさせていただいた。その方は家に帰って、なんでこんな素人が描いたパラパラ漫画なんてもらったんだろう…と我に返ったことだろう。

人生に不必要袋。なぜかスーツ。なぜか真顔。

台車ラジコン 使い方まちがっている。

次ページ 「う~ん、まずい。もういらない。」へ続く