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最新メイクを自分の顔で試せる。世界で1200万DLされたロレアルのスマホアプリ ——「salesforce connections 2015」レポート②

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「salesforce connections 2015」レポート①はこちら

Christophe Eymery氏
Head of Digital for L’Oreal Australia & New Zealand

米国で6月16日~18日まで開催された「salesforce connections 2015」では、ユーザー企業のマーケターによる成功ケースの発表も行われた。会社をあげて、デジタル戦略に力を入れ、新しいジャーニーを構築しているケースとして、ロレアルオーストラリア&ニュージーランドのHead of DigitalであるChristophe Eymery氏が自社のケースを発表した。

ロレアルでは1年前にグローバル・チーフ・デジタル・オフィサーのポジションを新設。同社のグローバル・チーフ・デジタル・オフィサーはCEO直下の役職で、取締役の一人にも加わるなど、全社を挙げてデジタル戦略に力を入れている。

ロレアルが描く、今後のデジタル戦略。

世界の最新メイクスタイルを自分の顔で

ロレアルのアプリ「Makeup Genius」は、日本市場でもローンチされている。アプリの制作は社内のサイエンティストのチームの他、ブラッド・ピットが主演し、80代で生まれ、徐々に若返っていく男性の運命を描いた映画「ベンジャミン・バトン」の制作に携わった、米国にあるイメージ・メトリクス社も参加している。
http://www.lorealparisusa.com/en/brands/makeup/makeup-genius-virtual-makeup-tool.aspx

Christophe Eymery氏は、同社のデジタルの取り組みの一環として1年前にローンチしたアプリ「Makeup Genius」についてプレゼンテーションを行った。ユーザーはまず、自分の顔をスキャンする。ここで顔の60以上の各パーツの位置が把握される。さらに独自のアルゴリズムで、その人の表情が、どのように風に表情が変化するかまで予測。アプリ内にはロレアルの各製品の他、ロレアルのメイクアップアーティストが考えた最新のメイク、ハリウッドセレブがしていたメイクスタイルなどのサンプルが随時更新されており、気になった製品やメイクスタイルを自分の顔で試してみることができるという仕組みだ。その場で興味を持った商品を購入することもできる。

サンプルメイクについても、ロレアルのどの製品を使用すれば、実現できるかが分かる他、メイク方法のハウトゥを紹介したビデオも用意されている。プレゼンテーション後、Christophe Eymery氏にこのアプリの戦略、成果について個別取材を行った。

——アプリの反響は?

グローバルでは1年前にローンチ、すでに世界30カ国で、ダウンロード数は約1200万(日本でも、このアプリはローンチされている)。私が統括しているオーストラリアでは2カ月前にローンチし、すでにダウンロード数は50万。オーストラリアの人口は約2400万人。その半数を女性と考えても、このダウンロード数は驚異的な成果だと考えている。

——このアプリが、商品の売上につながっているのか?

売上を公開することはできないが、大きな成果が出ている。オーストラリアの場合、1カ月の期間で見ると、アプリを利用する人は、ダウンロードをした50万のユーザーのうち、約8万。その1%の人が商品の購入に至っている。また購入者の平均単価は、1回あたり20~30ドル。この数値から、大まかな成果を理解してほしい。

——この取り組みは、リアルの店舗とも連動しているのか。

アプリの使い方を、デモンストレーションするChristophe Eymery氏。

アプリを使って店頭で商品をスキャンすると、その製品を使用した自分の顔を確認することもできる。加えて顧客と直接の接点を持つことができる、このアプリの有用性は顧客のデータが取得できることにある。ロレアルは価格帯、販路も多様なブランド群を抱えているが、小売り・流通経由で販売する商品については、顧客のデータを取得できない課題があった。しかしアプリの利用状況から、どんなメイクや製品に関心があるか、その好みも把握できる。このデータはセールスフォースのMarketing Cloudに送られるので、一人ひとりの顧客に適したメッセージを配信することも可能になっている。

以前から社内にあるCRMのデータベースを使い、プロモーションをしてはいたが、一人ひとりの顧客に合った情報は送れていなかった。真に顧客に求められるコンテンツを届けるうえでも、ブランドが直接顧客とつながりを持てるのは、とても有益なことだと考えている。

——ロレアルはあらゆるカテゴリ、価格帯の化粧品ブランドを傘下に抱えている。デジタルは、各ブランド間の横串を指すものなのか。

これまでは各ブランド別に、サイロ的なアプローチになっていた。しかし化粧品は一人の女性が複数のブランドを購入する商材だ。サイロ的な戦略のままだと、商機を失うことになりかねない。ロレアルではブランド側の視点ではなく、顧客中心に組み替え、あらゆるブランドに横串をさしたマーケテイングを実行しようと、今まさに変革をしている。その実現に際して、デジタルはとても重要な役割を果たすと考えている。


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「salesforce connections 2015」レポート③はこちら