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「日々を大切にする買い物のあり方」—フードプロデューサーの視点

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私は物心ついたときから、「どうやって食べたらいちばん美しいだろう?おいしいかしら?」と考えるのが楽しくて、いろいろな方法を試してきました。いわゆる完全な「食オタク」です(笑)。食べ方を見つめることは、生き方を見つめること。一食一食を丁寧に向き合うことは、人生を丁寧に生きることにもつながると思います。—買い物に関してはどうですか。こだわりはありますか。

自分の趣味や好みに合っているもので、使い勝手の良いもの、清潔感のあるものを選ぶようにしています。欲しいものは妥協せず、納得行くまで探します。特に食器や調理器具など食に関するものはそうです。衝動買いはほとんどしません。

先日、マグカップを買いました。
食後にコーヒーを飲むためのものです。まずは手に持ってみて、自分の好みの大きさかどうか、隅々まできれいに洗えるか、手首に負担がないか、カップの取っ手に指を絡めたときの心地はどうかを確かめます。商品がパッケージに入っていて触れられない場合には、触っている自分を想像します。また、カップの淵の厚みも私にとっては重要なポイントです。カップに口をつけてコーヒーが口に流れ込むとき、コーヒーの香りと味がおいしく感じられる厚みかどうか。これらがすべてフィットしたマグカップを探すのに、20~30軒の店を訪ね歩くことも珍しくありません。

—そんなに探すのですか!?

私は、何の変哲もない毎日のことを、とても大事に考えています。食後にコーヒーを飲むという、ただそれだけのことですが、日々のことを大切にすることが幸せにつながっていくと思います。

こうやって改めて自分の買い物をふり返ってみると、どんなシーンでどんな感覚で使うのか、それを使って幸せな気持ちになれるかなど、買ったあとのことを考えながら買っていますね。誰かにプレゼントを買うときも同じです。単なる「もの」としてではなく、ものとのかかわりによって生まれる心地良さや幸せ感を求めているのかもしれません。

—食器以外で最近買ったものはありますか。

靴を買いました。私は小柄なので、足のサイズに合った靴で、気に入った靴になかなか出あえないのが悩みです。先日も、いいなと思った靴を試着してみましたが、足首のバンドが肌に当たって違和感がありました。

ただ、対応してくださった店員さんがとてもいいアドバイスをくれたのです。マニュアル通りに対応する人なら、「当たってしまいますか。足の形に合わないのかもしれませんね」で終わるところですが、その店員さんは「これなら使ううちに馴染んでくるはずですよ。大丈夫です」と私の目を見て言ってくれたのです。その人の目には、「私を信じてくれて大丈夫ですよ」というプロ意識が感じられ、安心感を覚えました。

その日は荷物を持ち歩けなかったため買わずに帰りましたが、1カ月ほど後、改めて店を訪れました。偶然にも同じ店員さんが対応してくれましたが、なんと私の顔を覚えていてくださったのです。真摯に仕事に向き合うプロの店員さんの接客を受けて、とてもうれしい気分で靴を買うことができました。

次ページ 「小倉さんは、物販や外食のメニュー開発や店舗開発などを手掛けていらっしゃいます」へ続く