—小倉さんは、物販や外食のメニュー開発や店舗開発などを手掛けていらっしゃいます。最近の消費者が食に求める傾向として、感じていらっしゃることはありますか。
一昔前のように、「誰でもナタデココを食べたことがある」といった誰もが知るトレンドは少なくなり、業態ごとにトレンドが短期間で変わっていきます。物販の傾向としては、「これがあれば何でもおいしくなる」といった簡便さや便利さに加え、「体にも良さそう」という健康要素のあるものが売れています。
また、見たことのないものよりは、想像しやすく分かりやすいものが受け入れられる傾向があります。例えば、今年流行りのココナッツオイルは、これまでに使ったことはなくても、ココナッツもオイルも知らない人はいません。一昨年の塩麹も同じで、塩も麹も知ってはいるけれど、その両方が合わさることで意外にいろんな料理に使えると気付いた人も多かったはずです。しかも、麹は日本古来からの食文化ですから、健康食としての安心感や信頼感があります。このように、「便利」「健康」「文化」という要素が組み合わさった食品は、話題になりやすいですね。
私がお手伝いしているメニュー開発では、ごく一般的な料理や調味料でも、ちょっと視点を変えて工夫することで、新しさや楽しさを打ち出すことに成功しました。例えば、ある調味料の場合、形状を変え、使い勝手を変えたところ、調理の幅が広がり、ヒット商品になりました。また、から揚げのメニュー開発では、衣にまぜる素材を工夫し、新しい食感に変えることで、こちらも好調に売れる商品になりました。
—一般的な料理でも、アイデア次第でいくらでも新しく変えていける余地がありそうですね。
はい、無限にあると思います。ただし重要なのは、先ほども話したように、想像できる分かりやすさです。例えば、鶏のから揚げが、ワニの肉のから揚げに変わったら、「食べたことがない」という理由で二の足を踏む人が増えるでしょう。でも、鶏は食べたことがあるし、想像がつく。そういった分かりやすさをベースに、プラスαのアイデアを加えることがポイントです。これは近年のヒット商品にも当てはまります。ポップコーンもパンケーキも、食べたことがないわけではないのに、行列ができる。そこにはちょっとした戦略が必要ですが、「ちょっと」が「もっと」になると行き過ぎてしまいます。この「ちょっと加減」が重要なカギのような気がします。
小倉朋子(おぐら・ともこ)
フードプロデューサー
トータルフード 代表取締役
亜細亜大学講師。トヨタ自動車、海外留学を経て、現職。幼少期より、両親から食卓を通じて多くのことを学ぶ。世界各国の正式なテーブルマナー、食にまつわる歴史・文化・経済などを総合的に学び、生き方を整える「食輝塾」主宰。16年間一度も同じ内容の講座をしないなど、最新情報にも精通した食のスペシャリスト。飲食店のコンサルティング、メニュー開発に携わるほか、テレビ、ラジオなどメディアにも多数出演し、美しく凛とした食べ方を推進すべく活動している。
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