【前編】「川村元気×山崎隆明の「インプットとアウトプットの方法論」(前編)」はこちら
映画プロデューサーとして大ヒット映画を次々と手掛けてきた川村元気氏。小説や絵本など、常に新しいチャレンジをしながら結果を生み出し続けている。一方、CMプランナーの山崎隆明氏は、そんな川村氏のものの捉え方、作品に昇華するプロセスに興味を持ってきたという。ジャンルは違えど、日頃から表現と格闘している2人が互いの「インプットとアウトプット」に迫る。
キンチョール「つまらん!」は小津映画から生まれた?
川村:
僕は山崎さんの作るCMが大好きなんです。ホットペッパーの吹き替えの企画も、キンチョールのCMも。「つまらん!」はどうやって生まれたのですか?
山崎:
金鳥さんはユーモアでブランディングしてきた会社です。でも、空気を汚さないキンチョールは、「ギャグなしで誠実にやってほしい」というオリエンだったんです。絶対にバカなことをやるな、と。でも、どうしてもバカなことばかり考えてしまって企画が通らない。苦しまぎれに、笠智衆さんが小津安二郎さんのお墓の前に座っている写真を見せて、この世界観でやりたいと言ったのが始まりです。すごく好きで、ずっと切り抜きを取ってあった写真なんです。
川村:
え!?小津なんですか、あれ。
山崎:
正確には、小津さんのお墓の前にいる笠さんですけど(笑)。最初は大滝秀治さんが岸辺一徳さんと一緒に亡くなった奥さんのお墓参りをして、「母さんが生きていたころは空気を汚さない殺虫剤なんてなかった」と言って泣くという内容でした。撮影当日、アドリブで「つまらないことを言うなあ」とセリフを書いたら、それが「つまらん!」という大滝さんのセリフになりました。僕は、企画は世界観が大事だと思っているので、あまりストーリーは考えないんです。広告クリエイターはストーリー欠乏恐怖症の人が多くて、皆15秒にストーリーを詰めたがりますが、僕はそれがないですね。
