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行動経済学でわかる、非合理的な消費者のホンネ―「モノは言いよう」でなぜ結論が変わるのか

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第5号(2015年11月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

【関連記事】行動経済学でわかる、非合理的な消費者のホンネ―人は「失う恐怖」に弱い

過去の経験や直感、その時々の気分によって、人が下す判断というものは、いとも簡単に変わってしまうもの。人間とはとても非合理的な生き物なのです。そんな非合理さを理解できれば、あなたの会社のマーケティングは、もっと効果的なものになるかもしれません。

「応募者全員に100円券を差し上げます」または「応募者の中から50%の方に200円券を差し上げます」という選択肢を提示されたら、あなたはどちらを選ぶでしょうか?

両者の金銭的価値は、いずれも100円(後者は、期待値と呼ばれる計算で、50%×200円となります)で同じはずです。にも関わらず、このケースでは多くの人が「100円をもらう」を選択すると言われています。

理論上、計算上は同じ価値のものであっても、リスクの提示方法の違いで、人の判断に関わるインセンティブに影響を与えることがあります。このように、表現の仕方(言い方)によって、判断に影響を与える「フレーミング」と呼ばれる理論が行動経済学にはあります。

フレーミングの理論にはいくつかのパターンがありますが、先の例は「リスク選択フレーミング」と呼ばれ、「何かを“得る”場合の選択は、リスク(不確実性)を回避する選択肢を選び、何かを“失う”場合には、リスクを取る選択肢を選ぶ」傾向があると言われています。

ここで大切なことは、選ばれた選択肢が必ずしも経済的・合理的とは限らないことです。このため、リスクの見せ方一つで、人の判断を“経済的合理性”から引き離すことができると考えられるのです。

先と逆の例を見てみましょう。前号でも紹介したとおり、人は「得る」ことに比べ、「失う」ことに対して過剰に反応します。

そのため、「失うこと」を確定したくないがゆえに、「失わないかもしれない可能性」を含んだ選択肢を選ぶことになります。例えば、「今すぐここで500円支払う」または「90%の確率で無料。でも10%の確率で5000円払う」のどちらかを選ぶとしたら、後者が選ばれやすいのです(後者の期待値も10%×5000円で500円と同じになります)。

相手が好む選択肢で誘導する

ここから言えることは、提示する側の金銭的損得は同じでも、提示の仕方で相手の選択を誘導できる可能性があるということです。もっと言えば、金銭的には不利であっても、そちらを選択させることすらできるかもしれません。
先の例を使えば、

(A) 「今すぐここで500円支払う」
(B) 「85%の確率で無料。でも15%の確率で5000円払う」

とすると、(B)の期待値は750円(15%×5000円)で、(A)よりも経済的には負担が大きくなりますが、それでも「85%で無料」が魅力的に見えることで(B)を選択する人はいるかもしれません。

これをマーケティングや販促に応用しようとすれば、例えば「商品についている応募券を集めてプレゼントをもらう」という企画の場合、プレゼントは小さくとも応募者全員に当たるものと、プレゼントは魅力的でもなかなか当たらない抽選とでは、応募者(お客さま)の心理的な満足が変わってくるかもしれません。また、銀行でのローンでは、変動金利(つまり将来の不確実性を含んだ選択肢)と固定金利の設定の仕方なども関わってくるのではないでしょうか。

このようなときに、このリスク選択フレーミングを知っていれば、相手がいかに“非合理”な心理で選択をするかを予測し、相手に選ばせたい選択肢を用意できるかもしれません。次回以降、ほかのフレーミングについても紹介したいと思います。


柏木 吉基(かしわぎ・よしき)
データ&ストーリー代表多摩大学大学院 ビジネススクール客員教授横浜国立大学・亜細亜大学 非常勤講師

日立製作所入社。MBAを取得後、2004年日産自動車へ。海外マーケティング&セールス部門などを経て2014年独立。グローバル組織の中で社内変革のパイロットを務め、経営課題を解決。これらの実績に基づいた「デジタル時代にこそ求められる、課題解決型思考」を研修や実務サポートの強みにしている。新著に『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らないできる人のデータ・統計術』。


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