コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

箭内道彦×並河進「『社会のために」は、ブームじゃないぜ!社会×仕事×自分の関係の結びかた』【後編】

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自分が本当に感じている気持ちを広告に注げばいい

並河:僕は震災以降、広告は本当のことをどれだけ伝えられるのか、ずっと考え続けてきました。2012年に対談で初めて箭内さんにお会いした時、箭内さんは樹木希林さんと内田裕也さん出演のゼクシィのCMをやられていて、自分は結婚はしていないけど、自分なりの答えを探すということが本当のことを伝えることなんだと話してくれた。僕は本当のことを伝えるのはすごく難しい、でも本当に何かをすることだったらできると思っていて、だから企業が何か行動を起こすプロジェクトを立てているんです。ゼクシィのCMは、企業のメッセージでもあるけれど、自分が本当に思っていることでもある、という風になっていて、そこがすごくいいと思うんです。

箭内:以前NHKの番組「トップランナー」で、自分は自分の好きなものしか広告しないって宣言したんですよ。タワーレコードは音楽が好きだからだし、実家がお菓子屋だからハイチュウのCMは楽しいし。逆に関係のない商品の広告は、僕は下手だし、作りたくないという話をしたんです。でも、その後、いくつか岐路があって、オンワードの23区の婦人服の広告、グリコのビスコの広告と来て、その後ゼクシィの広告の仕事がやってきた。この3つがエポックメーキングでした。なぜなら、どれも自分とは関係がなかったから。婦人服を着る予定もありません、僕はお母さんではありません、結婚もしていません。でも、オンワード23区の仕事の時に、関係の結び方に気付いたんですよ。自分が使うもの、買うもの、好きなものだけが自分との関係じゃない。極端に言えば「分からない」ということも関係だと。分からない、知りたい、感謝している…そういうこと全部が関係だと思ったら、大体の商品が自分にとって関係あるものに突然変わったんです。婦人服なら、僕は頑張る女性たちに感謝しているし、刺激も受けるし、応援もしたいと思っている。その気持ちを広告に注げばいいんだと。

社会のために活動することが自然と仕事になっていく

並河:自分と関係のないものでも関係を見いだすスキルというのは、広告の人間ならではだと思います。前に対談した時も、敵対する人たちの間でどちらのことも「それもあるよね」と認めて橋渡しするようなことを、広告の人間ができたらいいという話もされていました。そして、今年は福島県のクリエイティブディレクターに就任されました。

箭内:猪苗代湖ズの時からずっと、自分は県民側の人間だと思っていたんです。でも、震災から4年たって、県と県民の間にできていた溝をこのままにしてはおけないという思いが大きくなってきて。それをモチベーションに、県の中に入って行こうと思いました。

並河:福島県で箭内さんは「ふくしまプライド」という県の農産物のPRをしていて、僕もお手伝いをしています。福島の農産物においしさや生産者のプライドが詰まっているという真実を堂々と語り、誇りを伝える企画です。

箭内:放射線、基準値、いろんな言葉がありますけど、そういう中で安全な農作物を作り、送り出すのはものすごく大変なんです。大変な努力をして送り出しても、農作物はイメージで「危ない」と言われる。けれど、それを作っている“人”は絶対に否定できないものだろうと並河さんと話しましたよね。

並河:対談の時に、いわゆる企業だけでなく、福島や日本、世界も勝手にクライアントだと思って活動している、勝手に活動しているけれど考え方は一緒なんだ、とおっしゃった。「社会にいいこと」を無理やり仕事にしていくのではなく、社会のために活動していくことが自然と仕事になっていくんだなと、箭内さんを見ていて思いました。最後に、若い人へ「社会のために」をどうやって仕事にしていけばいいか、アドバイスをいただけますか?

箭内:まずは、出身地とか今の地元とか、そういうところと自分の技術やコネクションをつなげることができないか、考えるところから始めるといいんじゃないかな。今の僕の仕事の地元は原宿で、来年4月にラジオ局を作るんです。「渋谷のラジオ」という名前です。何か面白そうだから一緒にやろうという人は連絡もらえたらと思います。

並河:僕は「ソーシャルグッドモーニング」というものを、毎週木曜日社内のカフェでやっています。箭内さんの「月刊 風とロック」(フリーペーパー)もそうですけど、こうやって自分がやりたいことをやっていると仕事につながっていくのは、なぜなんでしょうね。

箭内:自分から働きかけているからなのはもちろんだけど、意外と当たり前で大事なのは、仕事相手に自分を好きになってもらう努力を怠らないことじゃないですか? そういうことに、あまり照れちゃいけないんじゃないかな。

並河:そうですね。「社会のために」だって、普通は照れる気持ちがあるのに、僕らは照れがないんですよね。

箭内:でも、厚顔なわけじゃない。恥ずかしいし、怖いし、表に出ていくときもひるみますよ。自分が攻撃されるだけならいいけど、自分が応援しようと思っている相手にも攻撃というのは向いてしまうから。みんながもっと、穏やかになれたらいいなと思います。

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箭内道彦氏(やない・みちひこ)
クリエイティブディレクター。

代表作のひとつであるタワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」キャンペーンは、来年、20年目を迎える。「月刊 風とロック」発行人。また、2011年紅白歌合戦に出場した「猪苗代湖ズ」のギタリストでもある。

 

 

並河進氏(なみかわ・すすむ)
電通 コピーライター、クリエーティブディレクター。電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。

社会貢献と企業をつなぐプロジェクトを数多く手掛ける。著書に『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』(木楽舎)、『Communication Shift 「モノを売る」から「社会をよくする」コミュニケーションへ』(羽鳥書店)他。

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