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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

今だから話せる!?「芸能人は歯が命」CM制作の舞台裏(ゲスト:佐藤由紀夫さん)【前編】

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伝説の白土謙二さんの神企画書

中村:由紀夫さんは澤本さんとは昔からお知り合いなんですか?

澤本:白土さんのところにいるときだからね。

権八:白土謙二さんというね。なんと言えばいいんですかね、伝説の…。

中村:伝説のクリエイティブディレクターというか、電通で役員までいった方ですけど。

澤本:その人のところで僕は1年目にコピーライターをやっていて、2年目からCMをやって。白土さんが面白がってくれたので企画を持っていくんだけど、ほぼ通らないんだよね。

佐藤:通らないですよね。「これ面白い?」と言われておしまいです。へこみますよね。へこむというか、へこむを通り越して、もはや生きてちゃいけないみたいな(笑)。

澤本:真面目に50案ぐらい持ってくのよ。けど、「ふんふん。で、どれが好き?」と言われて、「これですかね」と言うと、「それ面白くないね」と。

中村:えー!

佐藤:ひどいんですよ。怖い、怖い。

権八:白土さんは佐藤雅彦さん、佐々木宏さんと同期ですよね。その3人が同期というこの気持ち悪さ(笑)。白土さんは昔でいうと、セブンイレブンの稲荷ずしのCMで一世を風靡された。

佐藤:最初がセブンイレブンだよね。白土さんの企画書は神企画書で、サントリーさんでノータッチで上がった企画書は当時過去2つしかなくて、1つはマーケが総力を結集してつくった資料集。あとは白土さんが筆ペンで書いた一筆書きの企画書。当時、ウイスキーが売れなくて、ヘアトニックみたいな形の安いウイスキーをいっぱいつくっていたら、それにモノ申すという感じでの企画書で、最後の2ページに筆ペンで「よって皆様がやってらっしゃる行為は」ページめくると「反ウイスキー的行為である」と書いてあったんです。大否定。それが通って、なんとその安ウイスキー群全部やめたんです。白角の淡麗など、ちゃんとしたウイスキーを作るようになった。病んでいるところをちゃんと見るお医者さんみたいな人ですね。

澤本:本当に企画書が素晴らしいんですよ。読んでいるうちに、この人の言っていることを信じないと、信じられない自分がバカじゃないかと思う。

中村:筆ペンで書くんですよね。今はパワポやキーノートみたいなご時世に、「これは」みたいな感じがしているし、中身もきっとすごいんですよね。説得されちゃうというか。

佐藤:僕は美大出身だから、白土さんにコンテを描かされていた。「筆ペンで描け」と言われて、「無理です。井上雄彦じゃないんで」とか言いながら(笑)。すごい人ですよ。

権八:その頃いないけどね、井上雄彦(笑)。

中村:由紀夫さんがゲストに来ると聞きつけた同じ部の方からタレコミがきているので、1個紹介させてください。TSさん:「佐藤さんはクライアントの話を聞いているようで、どうも上手に受け流しているような気がします。あのテクニックの極意を教えてください」。

佐藤:誰だ、こいつ(笑)? 僕は基本、クライアントの言うことを全部聞くんですよ。物理的にできないことはありますけど、だいたいどうしましょうねという話で、それをやるには、と全部聞くだけなんですけどね、受け流すというよりは。うーん、あんま意識してはやってないんですけど。

中村:やってみたけど、結局こっちのほうがよかったのでこっちにしました、みたいな感じですか?

佐藤:それはね、向こうもできないことを確認したいだけなんだと思うんですよ。クライアントさんもだいたい普通の人間だから、一旦聞き入れて、全部やってあげて、それは監督等々みんなに言って、できる範囲でやってさしあげる。「どうですか?」と、あきらめさせるというのをやって。だから、受け流すというよりはあきらめていただくということかな。

権八:確かに、由紀夫さんがクライアントと話しているのを聞いて、受け流しているという印象はないな。全て飲みこんでいるという印象のほうがある。

佐藤:そうですね、全部飲みますね。

中村:権八さんはありますか? クライアントさんからこういうシーンを入れてほしいと言われて、うまくはまるかな、難しいかなと思ったときに、俺はこうしているみたいな。

権八:僕はすぐ顔に出ちゃうらしいんですよ(笑)。だから、結構素直に「それはちょっと…」みたいなことはわりと言うかな。

中村:言っても大丈夫そうなキャラというか。

佐藤:そうだね、キャラクターによるよね。

権八:確かに、言っても向こうも笑って、「ですよね。でもさ、権八さんさ、気持ちわかるけど、そこをなんとか頼むよ」みたいな感じになることも結構あるかな。

佐藤:権八の場合、テクニックというよりは本当に困ってるんだよね。だから、向こうにもこいつ本当に困ってるなというのが伝わって、そんなに無理強いできないけど、そこをなんとか、私も立場があるのでという感じだったらやる。

権八:そうそう。腹を割る合戦みたいになって、本音でこっちも言うし、むこうも私じゃなくて上から言われるんで的な。「やらないと困るんです私が」みたいなこと言われて抜き差しならないとこまでいって、じゃあやりますかと。

中村:残念ながらお時間です。来週は佐藤由紀夫さん<後編>をお送りします。みなさんの質問やお便り、何でも構いませんのでドシドシくださいませ。メールアドレスはsuguowa@tfm.co.jp。また、「すぐおわ」Facebookページにコメントを書いていただいたものもお便りとみなして、どんどん読んでいきます!

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構成・文 廣田喜昭