スタバはないけど、スナバはある。地域PRに見る、逆転のマーケィング戦略

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第6号(2016年2月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

 

小さな組織の戦い方、そのヒントは近年、活発化する地域自治体PRにも学ぶべきことが多くあります。北海道夕張市の復興支援プロジェクトを自主提案し、カンヌ国際広告賞のプロモ部門でグランプリを受賞、現在は神奈川県産業労働局アドバイザーや、佐賀市シティプロモーションアドバイザーも務める、この領域の第一人者、三寺雅人氏が解説します。

 

寄稿者

三寺雅人 Masato Mitsudera
ジオメトリー・グローバル・ジャパン ヘッド・オブ・クリエイティブ

読売広告社でCMプランナーとしてキャリアをスタートし、その後ビーコンコミュニケーションへ。2009年には、北海道夕張市の復興支援プロジェクトを自主提案し、カンヌ国際広告賞のプロモ部門でグランプリを、PR部門でゴールドを受賞。この受賞を皮切りに、カンヌのプロモ&アクティベーション部門の国際審査員など数々の国際審査員を務める。2014年より現職。

 

スタバがないことを逆手に

2014年4月、砂丘で知られる鳥取県に「すなば珈琲」がオープンした。全国の都道府県で唯一、コーヒーチェーン「スターバックス」の店舗がないことを逆手にとり、県知事が「スタバはないけど日本一のスナバがある」とPR していたことから生まれた。このユニークなニュースは全国的に広がり「すなば珈琲」は連日賑わいをみせ、鳥取県は大きな注目を浴びた。そして同年9月、ついに「スターバックス」が動いた。最高経営責任者(CEO)が県庁を訪れ「鳥取だけに、大トリにしておいた。最後にふさわしい素晴らしいお店をつくりたい」と出店計画を明らかにした。こうして2015年5月、鳥取県に念願の「スターバックスコーヒー」がオープンしたのだった。

めでたし、めでたし…と思いきや、ここから「すなば珈琲」の逆襲劇が始まったのだ。「大ピンチキャンペーン」と称したプロモーションを展開し、鳥取駅前店のスタバのレシートを持参すればブレンドコーヒーを半額で提供、さらにはスタバよりおいしくなければ無料にするという大胆な策だ。プロモーションを告知するポスターやチラシでは、スタバを黒船に見立てて「いよいよこの時がやってまいりました」とメッセージ。何ともブラックな仕立てになっている。この騒動はまたまた話題となり、県内外から多くの人が訪れた。そして、今もなお「すなば珈琲」の勢いは止まらない。店舗は4つに増え、期間限定で東京にも出店、さらには市内の喫茶店主らと「鳥取珈琲文化振興会」を結成し、珈琲での地域興しにも乗り出した。鳥取市は総務省の家計調査で一世帯当たりのコーヒー購入量が都道府県県庁所在地と政令市の中で2位になるほどコーヒーが好きな地域。「スタバVSスナバ」この一連のプロモーションは地域の特性・事実を生かし、逆転の発想で話題をつくり、新たなビジネス・集客力をつくりだしている好例である。

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