テレビはもはや「次に何が起こるかワクワクして見るもの」ではなくなっている

【前回】「テレビは見られているのかいないのか、よくわからなくなってきた件について」はこちら

テレビと視聴者の関係が変化した

画像提供:shutterstock

テレビとはなんぞや?という問いは昔からありました。

1960年代に出版された書籍『お前はただの現在にすぎない』は、この問いへの回答となる歴史的な名著です。内容は、タイトルにつきる。テレビとは、ただの現在なのだ。テレビ論の基本となっています。

この考え方をもっとも具現化したのは、私が思うに「欽ちゃん」、萩本欽一氏です。ハイブローなテーゼを形にしたのが欽ちゃんというのはすぐに納得できないでしょう。でも、そうなんですよ。

2013年2月1日、テレビ放送が始まって60年を迎えたこの日、NHKはそれを記念する番組『テレビのチカラ』を放送しました。その中で、欽ちゃんがもっとも影響を受けたテレビ番組として挙げたのは「あさま山荘事件」の中継映像でした。

過激派が立てこもる山荘で何が起こるのか、中継映像はぶっ続けで山荘を写し続けたのです。「窓ばかり写すのね」と、欽ちゃんは言います。コントの練習をしていたのに戻ってこない二郎さんが、テレビに映る山荘の窓をじーっと見つめていたのだそうです。

その時、気づいたのだそうです。テレビは「何かが起こっている」から見るのでなく、「何かが起こりそう」だから見るものだと。

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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