NHKスペシャル「NEXT WORLD」の取材から見えた、AIと表現の未来【前編】

【前回】「西川美和×谷山雅計×福里真一「コピーライターと映画監督が語る、アイデアを生む“脳の動かし方”」【前編】」はこちら

2045年には、コンピューターが人間の知性を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えると言われている。今回は、世界中の科学者や研究者を訪ねその最前線を取材したNHK スペシャル「NEXT WORLD 私たちの未来」制作チームから、番組ディレクターの岡田朋敏さんと立花達史さん、プロデューサーの小川徹さんの3人が登壇。クリエイティブディレクター加賀谷友典さんと、電通の澤本嘉光さんと未来のテクノロジーと表現について語り合った。

「不確かな未来に舵を切る」心の準備はいいですか?

加賀谷:

今日は、昨年の1月にNHKで全5回でシリーズ放送された「NEXT WORLD」の制作現場を通し、われわれを取り巻く環境が30年後にどう変わっているのかを考えていきたいと思います。

小川:

3年前からインターネット部門で、ネットでの同時配信実験など、次世代テレビのプラットフォームやコンテンツの企画開発を担当しています。「NEXT WORLD」は5回シリーズで、番組のテーマ曲を担当したサカナクションの楽曲の歌詞「不確かな未来に舵を切る」をテーマに、毎回番組の最後は「みなさん、心の準備はいいですか?」という言葉で締めくくりました。これから起こる21世紀の圧倒的な変化におびえていてもしょうがない、ポジティブに捉えて楽しむ準備をしようよというメッセージを込めました。これから第1回と3回のディレクターがどのような気持ちで未来を見ていったかをお話しします。それではみなさん、心の準備をお願いします。

岡田:

第1回の人工知能(AI)をテーマにした「未来はどこまで予測できるのか」を担当しました。これまで一貫して科学技術がわれわれの文明や暮らし、社会をどう変えていくかというテーマで番組を作ってきましたが、現代の科学の世界には分からないことが膨大にあります。そもそも知能を理解するとはどういうことなのか? 肉体と脳の境目はどこにあるのか? こうした問の答えは分かっていません。そういう中で「NEXT WORLD」は、とにかく現実的に、だけど楽観的に、30年後の未来を描くことを趣旨としました。AIは人を上回る知能を本当に持てるのか? そうなったら、われわれの生活はどういうふうに変わるのか? レイ・カーツワイル氏が提唱する「シンギュラリティー仮説」、つまり2045年までにAIが全人類の知能を抜くという仮説を根拠に番組を組み立てました。

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