コンテンツはAIでどう変わるのか?
加賀谷:最後にコンテンツの話をしたいんですが、コンテンツとAIはどうなっていくと思いますか。
立花:8Kは人間にとっての究極のディスプレーを考える中で生まれたそうです。目の前に見えているものは映像なのか現実なのか、区別がつかなくなるところまでやろうとした解像度が8Kなんです。でも、テクノロジーはきっと8Kでは終わりません。もっと高い解像度が実現したときに、われわれ映像やコンテンツを作る人間は何を作るんだろう? これからはそういうことを考える時代だと思うんです。
カメラメーカーの技術者のインタビュー記事で「未来のカメラは何を目標とするのか」をお話しされている記事がとても良かった。目の不自由な知人が、デジカメでご自分のお嬢さんの成長をずっと記録し続けているそうなんです。その方に「そのデータはどうするんですか?」と尋ねたら、「いずれカメラのテクノロジーがサイボーグ技術と結びついて、僕の目も見えるようになるはずだから、その時に娘の成長記録を見るのを楽しみにしているんですよ」と答えられたそうです。テクノロジーが人間を超えることで、人間の幸せを形づくることも可能になるんだなと思いました。
小川:ゲームのバーチャルリアリティーはまだ解像度がそんなに高くないので、リアルな世界を再現できていませんが、8Kになったら、リアル以上の新しい世界が生まれるでしょう。ゲームクリエーターの水口哲也さんたちが、VRゲームのために開発したシナスタジアスーツは、振動素子をたくさんつけたスーツで、ヘッドマウントディスプレーと一緒に装着すると、本当にゲームの中の世界にいるような体験ができるそうです。そういうことが実現していくと、ゲームはもうゲームの世界ではなくなり、テレビはテレビではなくなっていきます。そういうテクノロジーを良いものとして使っていくように考えていかなければいけないと思っています。
澤本:今日のトークを聞いて、テレビ制作スタッフのすごさを感じました。激変していくメディアに対応していくには、新しい技術とうまく向き合っていかなければ取り残されてしまうということが分かりました。こういう番組を作ってくださったことに感謝します。
加賀谷:「NEXT WORLD」の第2弾を見たいと強く思いました。お三方にはぜひ頑張って続きを作っていただきたいです。本日はどうもありがとうございました。
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岡田朋敏(おかだ・ともはる)
「NEXT WORLD 私たちの未来」 第1回「未来はどこまで予測できるのか」取材ディレクター/NHK 報道局社会番組部チーフ・プロデューサー。1997 年 NHK 入局。2010 年 協会派遣によりペンシルべニア大学医学部 生命倫理学研究室客員研究員。主な担当番組にNHK スペシャル 「立花隆最前線報告 サイボーグ技術が人類を変える」(バンフテレビ祭ロッキー賞、放送文化基金賞など)、「グーグル革命の衝撃」(ワールドメディア賞・大川出版賞)、「立花隆思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む」「生命の未来を変えた男 山中伸弥iPS 細胞革命」。
立花達史(たちばな・たつし)
「NEXT WORLD 私たちの未来」 第3回「人間のパワーはどこまで高められるのか」取材ディレクター/NHK エンタープライズ デジタル・映像イノベーション チーフ・プロデューサー。2001年NHK エンタープライズ入社。主な担当番組に NHK スペシャル「世界ゲーム革命」(アメリカ国際ビデオフィルム祭シルバースクリーン賞)、「コンピューター革命 最強×最速の頭脳誕生」「ロボット革命人間を超えられるか」、マイケル・サンデルの白熱教室「科学と幸福の話をしよう」など。15年から8K4Kの制作も。8K×3D×22.2ch コンテンツ「Aoi—碧— サカナクション」4K制作特番「山口一郎 東京ナイトフィッシング」など。
小川徹(おがわ・とおる)
「NEXT WORLD 私たちの未来」デジタル担当プロデューサー/NHK デジタルコンテンツセンター副部長。1989 年 NHK 入局。ディレクター・プロデューサーとして番組制作に携わる。2013 年からインターネット関連業務に従事。NHK オンライン編集長などを経て、現在、ネットでの同時配信実験や、新たなコンテンツの企画開発などに従事。また長年にわたり、ファッション・デザインのテクノロジーによる進化について取材を続けている。主な担当番組に NHK スペシャル「世界ゲーム革命」(アメリカ国際ビデオフィルム祭シルバースクリーン賞)、NHK スペシャル「デザインウォーズ」、「TOKYO FASHION EXPRESS」(国際放送)など。
加賀谷友典(かがや・とものり)
フリーのプランナーとしてデジタルネットワーク領域で多数のスタートアッププロジェクトに参加。新規事業開発における調査・コンセプトプランニング、チームマネジメントが専門。主な事例としては坂本龍一インスタレーション作品「windVibe」「GEOCOSMOS」など。現在は生体信号を使った新しいコミュニケーション体験を提案する「neurowear プロジェクト」で脳波で動くネコミミ「necomimi」、脳波ヘッドフォン「mico」、脳波カメラ「neurocam」、EYEoT デバイス「mononome」などを開発。
澤本嘉光(さわもと・よしみつ)
CM プランナー/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター。1966 年長崎市生まれ。1990 年東京大学文学部国文科卒業、電通に入社。ソフトバンクモバイル「ホワイト家族」、東京ガス「ガス・パッ・ チョ!」、家庭教師のトライ「ハイジ」など次々と話題のテレビ CM を制作し、乃木坂46、TM レボリューションなどの PV なども制作している。著書に小説「おとうさんは同級生」、小説「犬と私の 10 の約束」(ペンネーム=サイトウアカリ。映画脚本も担当)。映画「ジャッジ!」の原作脚本、東方新起などの作詞も担当している。クリエイター・オブ・ ザ・イヤー(2000 年、06 年、08 年)、TCC 賞 グランプリ、ACC グランプリ、カンヌ国際広告祭銀賞、アドフェストグランプリ、クリオ賞金賞・銀賞など国内外で受賞多数。
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