シンギュラリティから個人の能力に合わせたマルチラリティへ
リクルートの石山氏は、人工知能が不完全な社会を補完するのではないかと考えている。活版印刷技術によって聖書が印刷され、識字率が上がり、キリスト教もカソリックだけではなくプロテスタントが派生した歴史を踏まえ、デジタルレボリューションも活版技術のような変化を起こすという、米計算機科学者のアラン・ケイ氏の言葉を紹介した。
石山氏がリクルートに入ったのも人工知能、インターネット、コンピューターサイエンスなどデジタルな革新が見えたためであり、その目的は入社して10年目に人工知能の研究所を設立することで実現できたとのことであった。
リクルートは2020年に人材ビジネスでグローバルNo.1、2030年にその他のビジネスでもグローバルNo.1という目標があった。最近はコードを書けない人でも機械学習やデータサイエンスができるようになり、今後は一人ひとりが自分の好きな人工知能がつくれる時代になってくるという。そうすると世の中にダイバーシティな価値観が生まれ安定してくるとともに、一人ひとりにシンギュラリティ(人工知能が人間の能力を超える)が起こるマルチラリティが実現する世界が訪れるのではないかと分析している。
モデリングのパラメーターに支えられたキュレーション技術で売り上げをアップ
Gunosy(グノシー)の福島社長は学生時代データマイニングの研究をしており、その一環としてグノシーを学生時代に立ち上げ、そのまま事業を継続している。グノシーはユーザーから見ると「ニュースアプリの会社」であり、投資家や広告主、広告会社から見ると「広告の会社」である。それは売り上げの100%を広告が占めているからであるが、実は自分たちでは「コンテンツを正しく評価する仕組み」の会社であると考えているという。そしてそのコンテンツを正しく評価する仕組みを通じてサービスを行っているのである。
福島氏はコンテンツの評価の手法を「おいしいカレーライスを作る」プロセスに置き換え、レシピ=アルゴリズムとしたうえで解説した。レシピの要因や変数を変化させることで学習し、一番多くのユーザーがおいしいと感じるカレーのレシピを素材や調理方法を試行錯誤しながら作っていくのに似ているということである。AIは勝手に何かをするものではなく、モデリングのようなプロセスを経て実現されるものであるという考え方だ。また、計算力(CPUなど)とデータ量が多くなったから実経済として利益が上がってきているので現在のAIブームが起こっているのではないか。実際にグノシーもアルゴリズムによりユーザー数や滞在時間を伸ばしているので広告の売り上げが上がっている(2016年度は46億円予想)ということである。
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