齋藤精一×豊田啓介×西牟田悠「可変する建築」【前編】

【前回】「石川善樹×ドミニク・チェン×水口哲也×山川宏×日塔史「人工知能は『アル』から『イル』へ。」【後編】」はこちら

IoT化された社会が実現されていこうとしている現在、建築領域でも加速度的に領域横断型の仕事が増えている。張り巡らされたデジタルネットワークがついに、空間や建築の分野にも浸食し結合し、建築家の仕事もコンベンショナルな建築物や構造・意匠設計から、もっと有機的な表現、業界外のプロフェッショナルとの協働型のクリエーションになってきている。今回のデザイントークは、建築家を経てライゾマティクスを立ち上げ、さまざまなアートやテクノロジーを使ったビジネスの実験を経て建築部門「Rhizomatiks Architecture」をスタートさせた齋藤精一さんと、日本と台湾を拠点に「コンピュテーショナル建築」の第一人者として存在感が高まっているnoiz architectsの豊田啓介さんを迎え、電通イベント&スペース・デザイン局の西牟田悠さんが「可変する建築」というテーマで未来へのビジョンを聞いた。前編・後編の2回に分けてお届けする。

デジタル時代にふさわしい「建築」の形とは

西牟田悠 氏

西牟田:

noiz architects(以下noiz)の豊田さんとライゾマティクスの齋藤さんは、実はコロンビア大学の建築学部の先輩後輩なんですよね。建築に軸足を置きながらも、アートや情報のデザインまで領域を広げている豊田さんと、メディアアートや広告を中心に、建築や都市のデザインにまで領域を広げている齋藤さん。そんなお二人のビジョンやデザインアプローチをクロスさせることで、これからの時代に求められるデザインのヒントが見つかればと思っています。

豊田啓介 氏

豊田:

noizは、デジタル系の技術によって建築やその周辺環境がどう変わるのか、複合的な実験や実証なども行っている雑食系の建築事務所です。今日は「可変する建築」というテーマだったので、まずは直球で「建築そのものが動く」事例をお見せします。台湾の建物の壁面の窓に取り付けられたファサードが街の音を拾ってインタラクティブに動く、街と人との新しいインタラクションを形にした事例です。

台湾には公共事業の1%はパブリックアートに使うという法律があり、これもアートという枠組みで作ったものです。建築は過去3000年もの間、動かず固定したものと考えられてきましたが、それは技術的な選択肢が他になかったからです。しかし動く建物を作ったり、制御する技術ができた今では、建築は3次元を超えてもいい。人間の心や体が環境によって変化するのが当然なように、建築も気持ちや環境に応じて変化していいと思います。

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