齋藤精一×豊田啓介×西牟田悠「可変する建築」【後編】

【前回】「齋藤精一×豊田啓介×西牟田悠「可変する建築」【前編】」はこちら

IoT化された社会が実現されていこうとしている現在、建築領域でも加速度的に領域横断型の仕事が増えている。張り巡らされたデジタルネットワークがついに、空間や建築の分野にも浸食し結合し、建築家の仕事もコンベンショナルな建築物や構造・意匠設計から、もっと有機的な表現、業界外のプロフェッショナルとの協働型のクリエーションになってきている。今回のデザイントークは、建築家を経てライゾマティクスを立ち上げ、さまざまなアートやテクノロジーを使ったビジネスの実験を経て建築部門「Rhizomatiks Architecture」をスタートさせた齋藤精一さんと、日本と台湾を拠点に「コンピュテーショナル建築」の第一人者として存在感が高まっているnoiz architectsの豊田啓介さんをお迎えし、電通イベント&スペース・デザイン局の西牟田悠さんが「可変する建築」というテーマで未来へのビジョンを聞いた。その後編をお届けする。

IoTは建築や都市の未来をどう変えるか?

西牟田:

お二人が考える建築や都市の未来について聞いていくために、いくつかキーワードを用意しました。IoTが注目されていますが、この流れと建築や都市が掛け合わさった時に、どんな変化が生まれると思いますか?

齋藤:

建築って本当は経済、法律、政治などと切っても切れないものです。でも、これまでの建築は建築申請を終えたら無関係、というスタンスだった気がして。IoTがきっかけで、いろいろな業界に共通言語が生まれたり、つながり直していく動きが出るのではと感じています。ちなみに、僕がいま一番IoT化すべきだと思うのは、「倉庫に眠っているブツ」や「人の記憶」です。デジタル化されないで眠っているカセットテープや写真や文献…こういった歴史や記憶がデジタル化されていかないと、本当の意味でのIoT化は進まない。僕がIoTに関して“いの一番”で手をつけたいのはここですね。

豊田:

家電メーカーと、10年後の家電がどうなっているか共同リサーチをしたことがあるんです。個々の家電にセンサーをパッケージングするのではもったいないので、おそらく共有化したセンサーを家に埋め込む形になるのではと話しました。同じことが、建物や都市のスケールにも言えるんじゃないかと思っています。だから、個別のIoTプロダクトの話というよりも、そこから取得したデータをどう処理して、複合的なニーズなり知能なりを呼び出すインフラやソフトウエアみたいなものを作っていくか、という話なんだと思っています。その方が断然ハードルが高いし、興味があります。

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