【前回】「齋藤精一×豊田啓介×西牟田悠「可変する建築」【後編】」はこちら
米国『WIRED』誌の創刊編集長であり、テクノロジー界の思想を牽引するケヴィン・ケリー氏の新刊『〈インターネット〉の次に来るもの~未来を決める12の法則』の翻訳版が7月下旬、日本で発売された。今回の電通デザイントークでは、その出版記念講演として、ケリー氏から30年先の未来に起こる重大な変化の中から三つのトレンドを解説してもらった。
未来は予測できるのか?
本日は、これから30年先の未来についてお話ししたいと思います。
未来はどのような方向に向かっていくのでしょうか。その多くは、まだ予測不可能であり、未知の領域といえます。ただし、一部については予測することができます。本日はその予測可能な方向性についてお話しします。
まず理解しなければいけないのが、テクノロジーというのは“単体の存在ではない”ということです。今私が使用しているマイクやコンピューターといった単体ではなく、“一つの大きなシステム”であるといえます。さまざまなものがお互いに接続され、大きなネットワークを形成しており、私はそれを「テクニウム」と呼んでいます。
テクノロジーはそれぞれが自立していても同じパターンを繰り返し示し、ある特定の方向にベクトルが傾いているのです。その傾きは、どこに由来しているといえば、そのシステムを構成する“テクノロジーそのものの性質”からです。
電気のスイッチやシリコンチップ、あるいは電気の配線といった物理的な存在が、全体としての傾き、つまり方向性を決定するのです。これが「テクニウム」であり、長期的な方向を定めています。そこで、このテクノロジーの傾きを見ることで、長期的なトレンドが予測可能になるのです。
