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「誰でも本屋になれるしくみ」が、出版流通を少しずつ変えていく

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バスケット用品売り場に『スラムダンク』が全巻置いてあったなら

柳下:今進めている個人ショップでの「ことりつぎ」は、いわば“フェーズ1”だと考えてまして。

白川:では、“フェーズ2”では何を?

柳下:こだわりのある個人ショップのオーナーさんだったら、自分でオススメを選書して、自身の店の世界観にぴったりの本を置けるんです。

白川:はい。

柳下:そうではなくて、「明確なイメージはないけれど、本を置いてみたい」という欲求に対して、こちらであらかじめ選書して、パッケージの状態でお送りするという仕組みを考えています。

永野:例えばどんなパッケージですか?

柳下:ずっとやりたいと思ってるのは、バスケット用品売り場に『スラムダンク』全巻を置くことですね。

永野:それいいですね!

柳下:床屋になぜか『ゴルゴ13』があったりするじゃないですか。

白川:確かにありました。

柳下:本棚は客層に紐づいて編集できます。世界観を表すのに、本ほどオールマイティーなものはないんですよ。

永野:映画や音楽じゃ、ダメなんでしょうか。

柳下:映画や音楽だと、カバーしきれないカテゴリーが出てくると思うんですけど、 本には「そのカテゴリーの本は存在しない」ということがまずないですから。 それに、解釈の仕方によって、本のカテゴリーって変わるんです。

永野:え? どういうことですか。

柳下:たとえば『鬼平犯科帳』は、時代小説でもありますが、長谷川平蔵が、いかにして悪者を捕まえるチームを結成するか、という プロジェクトマネジメントのビジネス本としても読めるわけです。

永野:そういえば、政治家が時代小説を好きだっていうのも・・・。

柳下:あれも、兵法や民意など、集団を動かすマネジメントを参考にしているのかもしれません。

白川:それでは、「ことりつぎ」の今後の展望を教えていただけますか?

柳下:今は、最初から別な商品やサービスで売り上げが成り立っているショップに本を届けていますが、最終的には「誰でも本屋になれるしくみ」にしたいです。本だけで売り上げ構造を作れる、本来の意味での本屋です。本屋を始めるのって、すごく大変なんですよ。初期投資もかかるし、返本を前提に原価を設定するから、利益率も上がらず、新規参入が難しい。

だから、業界として弱くなってしまう。メーカー、流通、小売のすべてが、同時に、少しずつ、変わっていければと思っています。やっと大阪屋栗田という大規模流通の取次さんが声をかけてくれて、流通やサービスを一緒にやっていくことになりそうです。リリースしてから1年、ようやくインフラが整ってきました。

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