新規顧客と既存顧客どちらを大切にすべき?
前回のコラムでは、ワールドマーケティングサミットでのキッザニア創業者のロペス氏の講演から「人は読んだことの10%しか覚えてないが、体験したことの90%は忘れない」という話をご紹介しました。
今回は、ワールドマーケティングサミットでもう一つ印象に残ったエンゲージメントの効果測定についての講演をご紹介しましょう。
前回のコラムでテーマにしたのは、100万人に表示するバナーと、2000人が参加するファンミーティングの価値を人数以外で比較することができないかという視点でした。同様の人数の問題は顧客へのコミュニケーション手法だけでなく、顧客自体の価値評価でも発生します。
つまり見込顧客100万人と既存顧客2000人は、マーケティング的にどちらに価値があるのか?という質問です。
議論する部署にもよると思いますが、一般的な大企業では、この議論は見込顧客100万人の方が勝つことが多いはずです。見込顧客100万人に広告を表示して新しい顧客を獲得できる可能性があるのであれば、既存顧客2000人をもてなすことにコストを掛けるよりも、売上が上がると感じる人が多いからです。
もちろん、そもそも論で言うと、この2つを比較すること自体が間違っています。新規顧客を獲得することも、既存顧客を大事にすることも、企業活動としてはどちらも非常に重要です。
ただ、マーケティングの現場で良く起こる議論が、極端な言い方をすると、既存顧客は既に「釣った魚」なのだから、釣った魚にエサをやるような行為にお金をかけるぐらいなら、新規顧客獲得に全てのコストをかけた方が良いのではないかという議論です。
実際問題、新規顧客獲得に大量の宣伝広告費を投入している企業において、既存顧客とのコミュニケーションの予算が厳しく必要性を追求され、カットの対象になりがち、というのは珍しい話ではありません。
ここでポイントになるのは、この議論をする上で新規顧客も既存顧客も全て同じ「1人」という単位として捉えている点です。
LTVやCLVと呼ばれる顧客生涯価値の視点で見ると、この議論は少し変わって見えてきます。同じ「1人」であっても人によって、企業にもたらす価値は違うのではないかという視点です。
同じ2000人でも、1年に1回しか商品を買わない顧客と、1年に毎週のように商品を買う顧客だと、企業にもたらす売上では50倍以上の差がつくことになります。さらに、この概念を拡張する形で、ワールドマーケティングサミットで紹介されていたのがこちらのスライドです。
これはジョージア州立大学ビジネススクール教授で、マーケティング戦略などの様々な賞を複数受賞されている実績もあるクマー教授という方が、カスタマーエンゲージメントの価値の4つの要素として紹介されていたものです。
■CLV:カスタマーライフタイムバリュー(顧客生涯価値)
■CRV:カスタマーリファラルバリュー(顧客紹介価値)
■CIV:カスタマーインフルエンスバリュー(顧客影響価値)
■CKV:カスタマーナレッジバリュー(顧客知識価値)
一つ一つもう少し細かくご紹介したいと思います。
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