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コラム

藤村厚夫のメディア地殻変動

2017年、メディアをめぐる白熱のポイントを展望する―藤村厚夫氏(スマートニュース)

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新たな年を迎えて時間が経った。だがメディアとテクノロジーが交差する分野においては、昨年後半から本質的な議論がなお進行中だ。フェイクニュース旋風の中心にあったアメリカ新大統領は、就任演説で改めて対立の図式を強調することになった。2017年がより各種の対立を顕在化させ、荒々しいものとなるのを予感させるのに十分な滑り出しだ。

本稿では2017年の展望の形式を借りて、これら白熱するポイントを3つに絞って、筆者の論点を述べておきたいと思う。

図 1 対立の構図を激化させる? 新大統領の誕生

最初にその3つをあげておこう。

  1. コンテンツの“質”への視点は深まったか?
  2. メディア事業の継続性を、広告が支えられるのか?
  3. “メディアの姿”が見えなくなる?

それぞれについて、以下で管見を述べていく。

フェイクや低品質コンテンツへの闘いは、さらに続く

「コンテンツの品質問題とは、何を意味するのか」から考えてみよう。ここには重層的な視点が求められる。

まず、いかに“フェイク(偽)”なコンテンツを排除していくかという社会的な取り組みが急がれる。その次に、どうすれば低品質に比し高品質なコンテンツが評価されるかという課題へ向かわなければならない。そして高品質を旨とするメディアが継続可能であるような事業モデルを築くという課題が連なる。

意図された(悪意に基づく)フェイクに対しては早期に発見、摘発する仕組みの構築が急がれる。ネット以前にはありえなかったほどの規模と速度と、そして容易さでフェイクが伝播する時代に入っている。対策にも規模と速度が必要だ。

そのためにはネット上にも目安箱のような仕組みが必要となるだろう。さまざまな視点からのファクトチェックへの取り組みを育てなければならない。

また多くの通報情報を非営利機関がいったん受け取り、一定の検証や情報公開を行っていくような社会的、(メディア)業界的な合意形成も求められる。法制度など副作用も想定されるようなハードな仕組みが動き出す前に、ネット上のメディア、ジャーナリズム自体がフェイクへの対抗力を有することを示すべきだろう。

ここではテクノロジーを駆使するプラットフォームの協力も重要だ。ことある度にあげつらわれるソーシャルメディア、テクノロジー勢力だが、集合知を活用するフェイク対策は最も可能性の豊かなアプローチとなるはずだ。

図 2 活発なファクトチェック・メディアの「PolitiFact」。真偽の度合いをメータで示す

さらに低品質から高品質へと向かう潮流を創り出すために、そもそも「高品質とは何か」「高品質はどう測定できるのか」といった議論が高まり、それを反映する「質的指標づくり」「高品質へのインセンティブを形成すること」が求められる。この背景については、「米国大統領選を動かした?“フェイク(偽)ニュース”とメディアはどう戦うのか」の回で述べた。

現在もなお多くのメディア、広告ビジネスでインプレッションを中心とした量的指標が支配的だが、量への過度な傾斜がアドテクと結びつき、フェイクビジネスを支える下地となったことを忘れてはならない。

このような傾きに対抗する動きを、良質を求める読者とのエンゲージメントに紐づけられれば、商業的にも好循環を期待できる。そのためには、フェイクはもちろんのこと、低品質をよしとするメディアへの広告掲出を抑止するアプローチも求められる。

目先の投資対効果に流され、質的評価視点を欠いた広告出稿には、広告主自身もまた厳しい社会からの視線にさらされることになると周知されなければならない。

次ページ 「「Medium」の広告収益モデルからの撤退の衝撃」へ続く