【前回の記事】「コピーライターは社員の行動のスイッチを押す「相談役」である」はこちら
平山広告事務所 クリエイティブディレクター・コピーライター
平山浩司(ひらやま・こうじ)氏
1963年宮崎県出身。一橋大学社会学部卒業後、電通に入社。営業局を経て、88年からクリエーティブ局へ。以後、コピーライターやクリエーティブ・ディレクターを務める。2017年2月に独立。主な受賞歴は、ADC賞最高賞、新聞協会賞最高賞、読売広告賞、新聞広告電通賞、朝日広告賞最高賞、毎日広告賞最高賞、日経広告賞最高賞など他多数。
社史上の「人間」と向き合う
──平山さんは旭化成や凸版印刷などの企業広告を多数手がけています。長年にわたり、企業のメッセージづくりに寄り添う仕事をされてきました。
企業の方々がコピーライターに望んでいるのは、上手に自分たちの”今”を言い当てることではありません。自分たちの”あるべき姿”を設定することだと考えています。今はまだできていないけれど、その姿に到達できるように努力していくことを約束する、自分自身に厳しくて高いハードルを課すようなものだと思います。
企業理念を言葉で表現し、メッセージを伝えることは非常に難しいことです。企業のステートメントや理念を読んでみると、どれも似たり寄ったりで、まるで「借りてきた着物」を着ているような印象を受けることが多いですよね。
僕のやり方は、まず企業が生まれた背景や社史をできる限り頭に入れます。その上で創業者をはじめ、企業の歴史上に登場する「人間」と向き合うようにします。すると企業のこだわりが浮かび上がってきて、言葉を見つけることができます。話すと簡単なように聞こえるかもしれませんが、時間のかかる難しい作業でもあります。
明確な答えは経営者の中にある
──企業の広報担当者は今、自社のブランディングに強い関心を寄せています。平山さんが感じている、ブランディングの課題とは。
海外市場でのブランディングに関する課題は多いですね。例えば「思うように海外事業のアクセルを踏み込めていない宙ぶらりんの状態なので、グローバル市場におけるコミュニケーション設計をお願いしたい」といった相談もあります。あるいは企業合併や社長交代の際に「何を捨てて、何を残すべきか」を悩んでいる企業の方も多いです。その上で「自分たちにしかできないこと、強みを見つけてほしい」といった相談をいただくケースが目立ちます。
ただし「強み」というのは形がありません。トップから新入社員まで、その企業で働く人々の頭の中にあることなので、当事者の方々とディスカッションしながら探っていきます。各社の広報担当の方とやり取りさせていただくことが多いですが、経営者の方にお話を聞くことも多いです。トップとして、人任せにはしておけないと考えているのでしょう。
現場の方々と議論していてもなかなか埒が明かないとき、思い切って経営層に聞くと即座に答えが明確になることがあります。現場の人たちも、自分も非常に驚きますね。
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