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コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

ACC賞フィルム部門 澤本嘉光 審査委員長「CM業界だけで閉じない審査をしていく」

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CM業界だけで閉じない

田中:選ぼう、というだけじゃないんですね。

澤本:選ぶ時にしても、実は僕らはたくさんのヒントをもらっているんです。山のように有象無象のCMを見ながら、「こうしたらもっといいのに」と思ってしまうわけです。それを誰かとしゃべりながら見られると、すごく勉強になる。でもその時に、しゃべる人がCM業界の中だけだと閉じちゃう。閉じるって言うのは、今一番よくないから。今回の審査委員の構成は、CM単体のプロの人数を半分程度に抑えたんです。

田中:それは画期的ですね。こうした広告賞では、制作者として実績を積んできた方々が中心となって審査されるのが普通で、一定の成果をあげてきたと思います。ただ、時代が変わって新たなアプローチが求められているとも感じます。

澤本:フィルム部門はAカテゴリーとBカテゴリーが分かれて、Aはデバイスで言うとテレビで、BはWebというけど、ほとんどがスマホなんですよ。スマホで見ることを意識しながら審査する必要がある。そのために今回、まだ若いですがWeb動画が得意な電通の佐藤雄介くんにも入ってもらって。あとは才能があって動画が好きな人に入ってもらいたかったので、ロバートの秋山竜次さんに絶対来てほしかったんです。

田中:あの人はすごいですよね。

澤本:今もすごいし、5年前に番組企画でCM制作しているの見たら、制作者としての秋山さんがすごくよかったんですよ。僕も審査委員で出ていて、この人うまいですねと言ったら「秋山は映像大好きなんで」と。それを聞いて、審査をお願いするなら秋山さんだとずっと思っていたんです。

田中:音への造詣も、深いんですよね。

澤本:そうなんです!こういう人たちの興味がこちら側に向かってほしいし、なんなら境を超えてつくってくれてもいいじゃないですか。もっとボーダーレスになれば、産業として活気づくと思うんです。既得権益というと変ですけど、決まりきった枠の中でやっているからある程度マックスが見えてしまう。それはCMもそうだし、テレビ局もその最たるところだと思う。そこを、違う才能の人に入ってもらうきっかけにしたいなと。

あとは、去年で言うとラジオCM部門で審査委員を務めた乃木坂46の橋本奈々未さんの役として、今一番会いたい、演技がうまい、モノをつくりたいという意思が顔に出ている人、ということで女優の吉岡里帆さん。

田中:予定調和じゃないし、何が起こるかわからないし。

澤本:プロではない客観的な視点ですね。田中さんに、ぜひ審査委員に入ってもらいたかったのは、いろんなメディアが広告から離れていく中で、宣伝会議はずっと広告を取り上げてくれている。メディアの方にはぜひ参加してほしいし、発信してほしい。

田中:ありがとうございます。私は取材や審査などでたくさんの広告に接していますが、「今年はおもしろいものがない」なんて思ったことは一度もないんですよ。絶対におもしろいものはあるし、関係者がつまらないなんて言ったらおしまいですよね。

澤本:審査方針ですけど、事前になんの意思も押しつけもないんですよね。ラジオの審査委員長の時に審査委員の西田善太さんから「もっと自分の意見を出して、こうしたいというのを言っていいんだよ」と言われたんですけど、僕は審査委員の皆さんを選んでいる段階で意思を入れているんです。

僕なりに“こうなってほしいな”という審査会にしようと思って選んでいるので、そこから先を強引に引っ張ることはなくて、その人たちが選んだものがいいというのがリアルな意思なんです。そして、「世界基準」というよりは、「この日本の世の中で選ばれるもの」。

田中:日本でしかつくれないもの、日本だから生み出されるもの。

澤本:ガラパゴスとか言われますけど、そういう中で、今どっちに行ったらいいかを示唆するものを選べればいいと思います。

田中:そう思います。海外からの旅行者は、東京よりディープな地方が好きだったりしますよね。例えば大阪でたこ焼きを食べたり買い物をしたり。そういうことを聞くと、日本ならではの強みを見極めた上で勝負しないと、世界で勝てないなって思います。グローバル化が本格的になる前提で、何を考えるかというヒントもこの賞の中から出てくるのかなと思います。

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