「広告を広告する」審査会を企画する
田中:とかく広告賞というと、今日までに流れた素晴らしいものを“過去にさかのぼって”選びましょうと受け取られがち。でも今回のコンセプトを聞いていると、“今ある中から、未来に向かって動き出そうとしている何かを、視聴者も交えて考えましょう”と言っている気がしてワクワクします。
澤本:過去をただ審査するのもいいけど、「こうしたらいいんだ!」というヒントになるようなことをしたいですよね。
田中:私もよくほかのメディアから、「最近のCMの傾向は」と聞かれるんです。みんなCMを通して社会を、ひとの心の動きを見たいんですよね。メッセージにもある「広告を広告する審査」としては、まさにACC賞を通してみる日本、もしくは消費者、若者…そういうメッセージを、とくにフィルム部門から出していけるのかなと思います。
澤本:「広告を広告する」というのはまさにそこで、ただ選んで身内の中で「これが一番」と言っていても仕方がない。選ばれたものを世の中に「どう?納得する?」と聞きたいし、本当にどうにかして紹介したいんです。
メディアの田中さんにやってもらえたらすごく助かるし、秋山さんなどタレントさんは発言力があるじゃないですか。ほかの芸人さんに「こういうCM見たんだけど、いいんだよ」と話してくれるだけでもいいし、ツイッターでつぶやいてくれてもいい。
まずは、ACCという団体があることを知ってもらわないと。世の中の人、ほとんどACCの存在を知らないですよ。知らせるために今までは、贈賞式にゲストを呼ぶということしかなかった。ゲストを呼ぶだけなら、審査してもらった方がいい。その方がニュース化しやすいし、何より本質を知ってもらえます。
田中:ACCメジャー化計画!業界内ではACCはよく知られていますが、一般の方々に知ってもらおうということですね。これまでACC賞は、広告界の一番であり続けなければならないというプレッシャーが強かったのかもしれません。例えばACCを獲っていないものが急にSNSで話題になったりすると、“審査で漏らした”感が出て反省モードになることもあるけど、そういうことも気にしなくていいんですかね。
澤本:気にしなくていいですよ。もし、そういうものが出てきたら、「ACCに選ばれなかったけど人気に」というのが価値。
田中:なぜ選ばれなかったか、と。
澤本:そういう議論をね、された方がいい。本当に知らないですからね、皆さんACCを。そしてACCというか、広告というものに興味を持ってもらうことしか僕は考えていないんです。そうじゃないと、「広告は終わりだ」とかすぐネガティブなことばかり言うじゃないですか。
10年くらい前に「テレビは終わり」って言われていた時、僕は絶対終わりになんかならないって言っていました。終わりになるって本を書く方がラクなんですよね。だから、その時にそう言ってらした方を「終わってないじゃないかよ」と吊るし上げたいくらいです(笑)。それと同じようなことで、メッセージとして、ポジティブに「CMはこうなったらもっとよくなるよ」ということを言っていきたいですね。
田中:向き合う姿勢ですよね。マイナス的に“お手並み拝見”みたいに見ちゃうと、CMだっておもしろく見えないけど、「何を見せてくれる?」とワクワクすれば前傾になるからおもしろい。その向き合い方を変えてもらうような、きっかけにもしたいですよね。
澤本:したいですね。田中さんのような、前向きで意識のある方に参加してもらうと、多分、今思っている以上のことが、絶対に中で起こるんですよ。審査会の中で、CMの制作者が「逃げ恥」のプロデューサーの那須田淳さんと話したら「こういうのできますね」となったり、テレ東の「ゴッドタン」ていうクレイジーな番組を作っている佐久間宣行さんと会ったら何かできたりするかもとか。ここで場を作って、ここから何かやっちゃってくださいという。
田中:何かやりたい、ほんとに。
澤本:僕は審査をしますけど、アイデア会議だと思っていて。審査の中で、「こういうのやりたい」というアイデアが出てきたら素晴らしい。審査会が楽しければ、絶対に審査もいいですしね。
田中:アイデア会議というのは、いいですね!
澤本:あと審査委員が魅力的だと、「応募したい」って思うんですよ。少なくとも今回は、あのロバートの秋山が見てくれるんですよ。「逃げ恥」も「ゴッドタン」も見てくれるんですよ。そして映画「君の名は。」のプロデューサー 川村元気さんですから。逆に見放される可能性もあるけど。それは、それでひとつの結果です。
田中:秋山さんを笑わせたいし、「逃げ恥」に褒められたとなれば、話題性も高いですよね。
澤本:さらに、吉岡里帆さんに褒められる可能性がある!全然、応募するでしょう。ただ、けなされる可能性もあるんですけどね(笑)。ラジオCM部門の審査は本当に楽しかったんですよ。できれば楽しい審査会にしたいなと。
田中:本当に盛り上がっていましたもんね。それでラジオ番組ができたのもよかったですね。
澤本:せっかく選ばれた作品も、文字でしか伝えないと何を褒めているのかわからない。聴かないとわからないので、審査委員長になったということで偉そうにして、ACC事務局に「作品をウェブで聴けるようにしてくれ」とお願いしたんですよ。そうじゃないと勉強にならないし、何のために選んでいるのかわからないからと。だいたい、聞けないことが続いていたのがおかしいですから。
そして、その告知をするために「選ぶ過程をラジオ番組にしたい」と。これをつくるためにラジオのディレクターにも審査に入ってもらって、同時に結果を知らせる番組を作ったんですね。受賞作品をラジオで流したらみんな喜んでくれて。それが、今やっている番組(「澤本・権八のすぐに終わりますから。」TOKYO FM)の始まりなんです。
田中:ほかの賞でも冒頭だけ流してフェードアウトさせてしまって、「全部聴かせて!」みたいなのありますもんね。聴かれなければ広がらないですからね。
澤本:だから本来、テレビのカメラに入ってもらってもいいくらいだと思うんですけど。まあ、どうにかして告知していきたいと思っています。僕的には、“審査会”という企画をしている感じになっているんです。企画だと思うとおもしろいなって。
田中:おもしろい!これ自体がもう企てであると。世の中がまた変わっていくきっかけになる。
澤本:企画と思うと、こうしたらもっと化ける、って考えていけるじゃないですか!
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