広告業界の労働環境が悪化してしまう原因は、「競合他社への代替」の起きやすさにある?

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広告業界でも業界団体を巻き込みながら、労働環境を見直す動きが加速している。これまでも広告業界の長時間労働については問題視されてきたが、仕事内容の特性もあって、本格的な対応はなされてこなかったのが実情だ。それが国内最大手の電通における問題が社会的な注目を集めたこともあり、業界全体が自らの改革・改善に本腰を入れて動き出している。

月刊「宣伝会議10月号(9月1日発売)」では、「どう変わった?広告業界の働き方」を特集。大手広告会社の労働環境改善に向けた取り組みから、識者による解説・分析記事、外資系エージェンシーに学ぶ働き方座談会などを紹介している。今回は、その特集内から、広告会社や広告制作会社などに勤めている人を対象にしたアンケート調査を紹介する。広告業界の「働き方改革」はどのように進んでいるのだろうか。


【調査概要】
調査期間:2017年8月6日~ 8月17日、調査対象:広告業(企業に対して広告戦略・企画を提案する立場)、調査人数:254人、調査方法:インターネット調査

「長時間労働」への対応 業種によって違いも

「あなたが勤務する会社には、労働環境の改善に向けた取り組みが必要だと感じますか?」と聞いたところ、「強く感じる・感じる」と85.1%が回答した。

広告業界で就労している人の大多数が、改善の必要性を感じていることが読み取れる。回答者の業種を見ても、広告会社、広告制作会社、SP・イベント会社はじめ、全業種で必要性を感じていた。

その理由についても聞いたところ、圧倒的に「長時間労働の慢性化」を挙げる声が多かった。「残業が常態化している」「常にスケジュールに追われている」など、やはり長い時間働かざるを得ない環境にあることを訴える声が目立つ。

続いて、「あなたの会社では、働き方の改善のための取り組みが始まりましたか?」と聞いたところ、「始まっている」と68.5%が回答。広告業界の多くの会社で取り組みが進んでいることが伺える。

ただし業種の内訳をみると「始まっている」と回答したのは、「広告会社」が77.3%、広告制作会社(グラフィック中心)が45.2%、映像制作会社が78.6%、SP・イベント会社が46.7%など、ばらつきがあった。

ここには企業規模も影響していることが伺え、社員数が50人以上の企業に属している場合は半数以上が「始まっている」と回答したが、50人未満の場合は43.6%と数字が下がる。規模の小さな企業が多い業種で取り組みが進むのは、これからというところだろう。

約半数が「働き方が改善」と回答 改革に一定の成果

改善に向けた具体的な取り組み内容で、多かったのが「労働時間に対する規制強化」「業務プロセスの見直し・改善」だ。退館時間や残業事前申請の徹底、スケジュールや納期の見直しなどが行われている。また、専門部門の設立や社員への聞き取り、研修、人員の増加も進んでいるようだ。

こうした改革が労働環境の改善につながっているのかを調べるため、「あなたの会社ではここ1年以内に、労働環境が改善しましたか?」と聞いたところ、「改善した・やや改善した」と49.6%が回答した。業界全体の取り組みに、一定の成果が出ていることが伺える。

改善の内容については、やはり「深夜残業の原則禁止」「ノー残業デーの徹底」「土日勤務の禁止」などの施策によって、残業時間が減少したことを挙げている。また、こうした取り組みや各種報道などによって、「早い時間に帰りやすくなった」「残業していると声をかけられる」という声もあり、社内の風土が変化していることが伺える。

一方で、「残業時間を減少させるよう指示されたが、業務量は減らず人員も増えない」といった声もあがってきた。まずはルールの作成が大事だが、次の段階では現場の実情に即した新しい働き方をつくっていく必要がありそうだ。

労働環境に特異性?「長時間労働」への対応進む

「宣伝会議2017年10月号」では、特集「どう変わった?広告業界の働き方」を実施しています。「広告業界の働き方」の課題から取り組み、個人としての働き方について考えています。詳細・購入はこちら

「広告業界の働き方が悪くなる原因はどこにあるのか」と尋ねたところ、さまざまな意見が集まった。その中で特に多かったのが「長時間労働を美徳とする文化」だ。

「仕事のないときも残業することが美徳と上司が考えており、その考えを若手に押し付けてくる」といった声もあるなど、長時間労働を推奨する考えが、いまだ根付いていることが伺える。

もう一つ多かった声が、「発注先からの過度な要請」だ。広告会社や広告制作会社の人から、「納期までの制作期間の短さ」「〆切直前の変更指示」「土日を挟んだ依頼」などへの不満の声が見られた。

同時に「深夜にも関わらず、無理難題を押し付けられるが、関係上断れない」など、依頼を受けてしまう広告業界の慣習を問題視する声もあった。

その背景として指摘されているのが「広告業界の競争の激しさ」だ。競合他社への代替が起きやすく、常に競争環境にさらされているため、無理な依頼であっても受けざるを得ないという声があった。

また、広告の制作物が1社ごとにカスタマイズが必要で、アイデアや企画といった形がなく人的な作業を必要とするため、属人性が高くなりがちで、どうしても手間がかかってしまう、という業界の特殊性を挙げる声もあった。

続きは、雑誌「宣伝会議10月号(9月1日発売)」をご覧ください。雑誌では、電通や博報堂など大手広告会社の労働環境の改善に向けた取り組み方や、「中川淳一郎×外資系広告会社座談会」、元電通・山口周氏が語る個人レベルの「働き方改革」など、さまざまな企画を実施しています。

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