【コピージアム】AIとクリエイターがタッグを組んで即興でCM企画をつくったら?

「宣伝会議コピーライター養成講座」の開校60周年記念イベント「コピージアム2017」が8月28日から9月3日まで、東京・六本木の東京ミッドタウンで開催された。期間中に行われたトークセッションの模様をレポートする。

「AI(人工知能)とクリエイターがタッグを組んで、その場でCM企画を作ってみたら」と題したトークセッションが8月30日に開かれた。

まるで大喜利のようなテーマの今回のセッションには、CMディレクターの中島信也氏(東北新社)、クリエイティブディレクターの井村光明氏(博報堂)、さらにはマッキャンエリクソン(McCANN TOKYO)のクリエイティブプランナー・吉富亮介氏、プランナー・折茂彰弘氏、そして同じくMcCANN TOKYOの“クリエイティブディレクター”である「AI-CD β(エーアイ・シーディ ベータ)」が登壇した。

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こちらが「AI-CD β」。McCANN TOKYO(マッキャントーキョー)の社員だという

広告界の“刺客”!? 「AI-CD β」とは何者か

「AI-CD β」の登場に会場からはざわめきが。まずはその紹介からイベントはスタートした。

「AI-CD β」はマッキャン・ワールドグループのミレ二アル世代のメンバーで構成され発足したイノベーションプロジェクトMcCANN MILLENNIALSが、CMのクリエイティブディレクションを行うことができるよう開発したAIだ。

れっきとしたMcCANN TOKYOの社員であり、入社式にも出席。名刺交換など、社会人として必要な最低限の所作は行えるとのこと(この日は調子が悪く、動く姿を見ることはできなかったが)。「AI-CD β」はすでに「クロレッツ ミントタブ」のCM制作に携わるなど、広告クリエイティブに新たな可能性を示しているという。

マッキャンの吉富亮介氏(左)と折茂彰弘氏(右)。中央に「AI-CDβ」。

「当社に在籍するミレニアル世代によるプロジェクトの第一弾として誕生したのが、この『AI-CD β』です。(英オックスフォード大の)マイケル・オズボーン博士によると、今後10年間で全雇用の約47%が人工知能によって自動化されると言います。クリエイティブ領域での創作活動は一般的に難しいとされていますが、多くのエンターテインメント作品がすでにAIのアルゴリズムによってつくられているのも事実。NETFLIXの大ヒット作『ハウス・オブ・カード』もその一つです。これに着想を得て僕らがつくったのが、この『AI-CD β』です」(折茂氏)

そんな広告界の突然の“刺客”に、これまで数多くの名CMを生み出してきた中島氏や井村氏も「僕ら、もう仕事なくなっちゃいますね」と嘆くと、会場からは笑いが巻き起こった。

東北新社の中島信也氏(左)と博報堂の井村光明氏

“無茶振り”なお題に、中島氏・井村氏が全力投球

CM制作の中で「AI-CD β」が担当するのはクリエイティブディレクションの部分である。「AI-CD β」は過去10年分のACC受賞作品を構造分解し、データベース化するAIで、“彼”にクライアント名や商品名、キャンペーンのゴールなどを入力すると、一体どのような要素を盛り込んだCMをつくるべきか、ディレクションしてくれるのだ。

今回は架空の大手飲料メーカーの「宣伝会議ビバレッジ」が炭酸飲料の新商品「コピージアムサイダー」を、ターゲットである10代の男女(どちらかといえば男性)に向け、訴求するCMを想定。すると「AI-CD β」はこのようなクリエイティブディレクションを提示した。

「〔真理探究〕を、」(コミュニケーションコンセプト)
「〔お調子者〕を登場させて、」(モチーフ)
「〔予告編〕的な手法を用い、」(手法)
「〔しっとり〕なトーンで、」(トンマナ)
「〔甘酸っぱい〕映像にして伝えろ。」(UX)

一見どこから考察して良いのか見当のつかないお題に、中島氏と井村氏も苦笑い。しかし中島氏は早速紙にペンを走らせ、絵コンテを描き始めた。

中島氏が早速提案したのは、お調子者のインド人の少年「ダイサムアジーピコ(コピージアムサイダーの逆さ読み)」が登場する青春モノのストーリーのアイデア。瞬発力と発想力でMcCANN TOKYOのメンバーをうならせた。

即興で企画を繰り出す中島氏

井村氏は「真理探究っていうと考えにくいけど、お調子者が出てくるわけだから、素朴な疑問と言い換えてもいいのではないか。例えば男の子が『どうして泡は下から上っていくんだろう』とサイダーを見ながら疑問に思っているシーンがあって、逆から見ている女の子が『私から見ると泡は上から下に降っているように見えるよ』と返したり……」というアイデアが出ると、中島氏も「いいね、それ!」と返した。

井村氏に普段どのような手順でCMを企画しているのかを尋ねると、「僕は過去のものを見て、それと似たアイデアを排除していくんです。でも今回は逆ですよね。特に『予告編』っていう手法はよく使われるものだけに、面白く見せるのはなかなか難しいですね」とコメント。

試行錯誤しながらも、いくつかの大胆なアイデアが2人から出されると会場は笑いに包まれた。

中島氏「AIは使い倒す価値はある」

短い時間でありながらも善戦した中島氏と井村氏だが、普段McCANN TOKYOのメンバーはどのようにAIによるディレクションからCMをつくっているのか? その問いに吉富氏はこう答えた。

「まずは一番難しい項目をどうクリアしていくかから考えていきます。『AI-CD β』は(データにもとづいた)まともすぎるディレクションを勝手にこねくり回してくれるのが面白い。そこにクリエイティビティがあると思うんです」(吉富氏)

また、折茂氏もAIを使った広告づくりに期待している点について、こう語る。

「クリエイティブの分野において人間が人工知能と戦わないといけないというよりも、企画を考える際、ひとつのツールとして『AI-CD β』がいてくれたらいいと思います。『なるほど、こういうアプローチもあるな』というインスピレーションになればいい」(折茂氏)

今回初めて「AI-CD β」と対面した中島氏らだったが、“彼”には一体どんな印象を持ったのか?

「人間でも無茶振りしてくるCDはいますが、AIの方が素直に従えるというか(笑)。サイダーで「真理探究」とまで言う人間は滅多にいないですもんね。自分が考えつかないようなことを提示してもらうことで、自分の思考回路が思わぬ方向に進んでいくことがとても新鮮でした」(井村氏)

「このAIは、つまりはACCに入賞しやすいCMをつくってくれるんだろうけど(笑)、僕はなんだかこのブラックボックス感が面白いと思いましたよ。まるでくじ引きだ。それに、AIと人間が決定的に違うところは記憶量ですよ。僕らも過去の記憶をベースにアイデアをひねり出しているけれど、AIはその物量が違う。これは使い倒す価値はあると思います」(中島氏)

初めてのコラボレーションに「新鮮だった」と語る中島氏と井村氏。今回はイベントとして即興CMづくりが披露されたが、こうした人間とAIがタッグを組むクリエイティブの現場は、近い将来当たり前の光景になるのかもしれない。

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「コピージアム」今後の開催予定

東京で1万2000人、大阪で5000人、金沢で3100人が来場した「コピージアム」。今後は札幌、名古屋、福岡を巡回します。

「コピージアム2017」Webサイト

■札幌
11月21日(火)~24日(金)
札幌駅前通地下広場 北大通交差点広場[東](札幌市中央区)

■名古屋
2018年1月11日(木)~18日(木)
NHK名古屋放送センタービル(名古屋市東区)

■福岡
2018年3月7日(水)~11日(日)
ソラリアプラザ1階イベントスペース「ゼファ」(福岡市中央区)

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