【前回コラム】「大阪でアーティストエージェンシーを立ち上げ、アジアで戦う」はこちら
関西でかたちラボという屋号でコピーライターをしている田中です。地域と向き合いながらクリエイティブをビジネスにしっかり落とし込んで活動していくのは、今の時代に必要なこと。しかし、成立させるのって本当に難しい!今回は、関西のクリエイティブはもしかすると希望に満ちているぞ!というお話です。
AKINDの場合
「関西で戦う。クリエイターの流儀」第4回目に登場していただくのは、神戸を中心に活動しているAKIND(アカインド)の岩野さんと森江さん。戦略立案やブランドマネジメントに長けているお2人です。
岩野翼・森江朝広(AKIND)
ブランディングに特化した会社に勤めていた2人が2014年に独立し、スタートさせた「AKIND(http://akind.jp/)」。同社では、格安航空会社「Peach」のブランディングをはじめ、ヒルトン大阪のラウンジ「MYPLACE CAFE & BAR」のプロデュース、神戸の食と市民をつなげる「EAT LOCAL KOBE」など多岐に渡る案件を担当しています。
ブランディングのスペシャリストAKIND。しかし、岩野さんと森江さんはそれぞれ役割が違います。岩野さんはブランド戦略立案やクリエイティブディレクションを、森江さんはプロジェクトマネジメントを担当。お互いの得意なことを生かしつつ、現在、神戸を拠点に活動している理由をお聞きしました。まずは、田中がAKINDのことを初めて知った神戸のファーマーズマーケット「EAT LOCAL KOBE」の目的や狙いについて。
儲かる地方、儲かるファーマーズマーケットを
—「EAT LOCAL KOBE」はどのような経緯でスタートしたんですか?
岩野:何のツテもない状態で「AKIND」を立ち上げた時、私の父からの紹介で神戸市と仕事をする機会がありまして。担当者からいろいろ話を聞いて、神戸市をブランディングするならもっと戦略的で大きなビジョンが必要だなと思いました。そのキーワードは「食」。なぜなら、海外では「神戸市」は誰も知らないけど「神戸ビーフ」は知られていたからです。2020年東京オリンピックが開催され、世界中から多くの方々が来るので、食を求めて集うまちに神戸をしませんか?という話をしました。そこで「GASTROPOLICE KOBE(食都神戸)」というコンセプトを提案。戦略の柱の1つとして地産地消のライフスタイル化を目的としたプラットフォーム戦略を策定し、その戦略をうまく活用して2015年に「EAT LOCAL KOBE」がスタートしました。
—EAT LOCAL KOBEの取り組みには自由奔放さを感じたのですが、行政のプロジェクトだったのですね。
岩野:僕らが得意としていることなのですが、実施する施策として上がっている案件を、今あるものやことを活かしてロジカルなストーリーに組み直すことで「これができます」って提案しました。ちなみに、2017年に立ち上がった「地産地消をあそぼう!」をコンセプトとした道の駅「FARM CIRCUS」も戦略の柱の1つです。
—「EAT LOCAL KOBE」では何を大切にしたのですか?
岩野:このプロジェクトで大切にしたことは集客のための場づくりではなく、仕組みづくり。そもそも「EAT LOCAL KOBE」は1日中開催するイベントではなく、初年度に社会実験として試行を繰り返し、現在はNPO法人が主体となって毎週土曜日開催されるプログラムに成長しています。毎回、午前中に終了して年に数回のお祭りというよりも、神戸でくらす人のライフスタイルとなることを目指しました。朝採り野菜をトラックに積んで、30分くらい走らせてお客さんに直接手渡しで売る農家さん。散歩がてらやって来て、ブランチ食べて農家さんとの会話を楽しみながら野菜を買うお客さん。両者のやりとりや時間の過ごし方を日常にしたいという想いが強くあります。そもそも海外のファーマーズマーケットは午前終了が当たり前で、イベント的ではないですし。
—でも、ファーマーズマーケットって、農家さんに負担が多い割にあまり儲からないのでは?
岩野:仕組み化に際しては、農家さんの利益が上がることを考えました。1つは出店の仕方。ほとんどの農家さんにはトラックで来てもらい、そのまま「お店」として使ってもらっています。そうすることで駐車場代が浮くように。あとは準備する什器も黒板だけにするなど、必要最低限にすることで通常のマルシェよりも利益が上がっています。農家さんがしっかり儲かることで、地元で育った農作物が継続的に神戸の方々の手元へ届くようになります。そのWIN-WINの関係を仕組み化することを、特に重視しました。
「関西で戦う。クリエイターの流儀」バックナンバー
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