『ざんねんないきもの事典』編集者が明かす “ざんねん”へのこだわり

高橋書店『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』

2016年5月の発売以降、続編、続々編を発売し、シリーズ累計発行部数268万3000部を突破した児童書『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』。編集を担当した高橋書店 書籍編集部の山下利奈さんが、企画背景やプロモーション戦略を明かす。
『編集会議』2018年夏号(7月31日発売)の特別編としてお届けする。

やんちゃな小4男子がワクワクする本をつくる

—「ざんねんないきもの」とは、一生懸命なのにどこか“ざんねん”な生き物たちのこと。この“ざんねん”という言葉にはついつい読みたくなる、不思議な魅力がありますね。なぜ生き物のざんねんな部分に着目したのでしょうか。

高橋書店
書籍編集部 主任 山下利奈さん

2008年高橋書店入社。販売部にて最優秀新人賞を獲得したのち書籍編集部に異動し、児童書・生活実用書を担当。担当書籍に、累計268万部突破の『ざんねんないきもの事典』シリーズ、累計50万部突破の『親子で遊べる たのしい! おりがみ』シリーズなどがある。

私は主に図鑑などの児童書や生活実用書をつくる部署にいるんですが、図鑑の制作過程で生き物の生態を調べていると「こういう一面もあるんだ!」とワクワクする瞬間があるんですね。例えば広告にもなった「リスは、ほお袋で食べ物がくさって病気になる」。「リスがせっせと餌をほお袋にため込む姿は愛らしいけど、さすがに腐らせてしまうくらいため込まなくても……」とざんねんに思ってしまいますよね。

そこで、あえてその意外な一面にスポットを当てた本をつくったら面白いんじゃないかと考えました。通常、図鑑は動物たちの身体的特徴や能力などの「すごいところ」を中心に紹介しますよね。ざんねんなところはマメ知識として1行2行入る程度で。

“ざんねんないきもの”という言葉は企画段階からなんとなく浮上していて、編集部内では「しっくりくるね」と言っていたのですが、やはり生き物にマイナスイメージが付いてしまう恐れもあり、社内外から反対意見もありました。監修をお願いした動物学者の今泉忠明先生も、誰よりも生き物を愛しているからこそ心配していらっしゃって。本当に「ざんねん」とつけていいのか葛藤することもありましたが、生き物に興味や愛情を持ってもらうにはこの言葉しかないと思い、気持ちを押し通しました。

続きを読むには無料会員登録が必要です。

残り 2974 / 3503 文字

KAIGI IDにログインすると、すべての記事が無料で読み放題となります。

登録に必要な情報は簡単な5項目のみとなります

「AdverTimes. (アドタイ)」の記事はすべて無料です

会員登録により、興味に合った記事や情報をお届けします

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ